令和6年度障害者総合福祉推進事業 身体障害者補助犬法の効果的な普及・啓発に関する調査研究 報告書 令和7年3月 社会システム 株式会社 目次 ア 事業要旨 1 イ 事業目的 3 ウ 事業の実施内容 5 1.幅広い世代に補助犬の使用について知ってもらうための調査等の実施 5 1-1.身体障害者補助犬の普及にかかる調査 5 1-2.幅広い世代に補助犬の使用について知ってもらうための課題の整理 13 1-3.使用希望者に向けた周知ツールの作成 13 2.災害時の身体障害者補助犬使用者への配慮事項についての調査等の実施 14 2-1.避難や避難訓練への参加経験のある補助犬使用者の実態調査の実施(ヒアリング調査) 14 2-2.補助犬使用者が抱える災害時への不安の実態(アンケート・ヒアリング調査) 15 2-3.自治体等に向けた災害時の身体障害者補助犬使用者への配慮事項についての周知ツールの作成 15 3.障害者差別解消法の改正に伴う過年度作成リーフレットのリバイス 15 エ.調査等の結果 17 1.幅広い世代に補助犬の使用について知ってもらうための調査等の結果 17 1-1.補助犬の使用希望にかかる既往調査の整理結果 17 1-2.補助犬使用者から見た「補助犬使用の希望」にかかるアンケート調査の結果 21 1-3.訓練事業者の使用希望への対応等にかかるヒアリング調査の結果 38 2. 災害時の身体障害者補助犬使用者への配慮事項についての調査等の結果 40 2-1.避難や避難訓練参加への経験のある補助犬使用者のヒアリング調査の結果 40 オ.分析・考察 45 1.幅広い世代に補助犬の使用について知ってもらうための調査等の結果 45 1-1.幅広い世代に補助犬の使用について知ってもらうための課題分析 45 1-2.補助犬使用希望者に向けたツールに掲載すべき内容の検討 47 2.災害時の身体障害者補助券使用者への配慮事項についての調査の結果 50 カ.有識者会議の実施状況 51 キ.その他の成果物 83 ク.成果の公表方法 91 (参考資料)補助犬使用者アンケート項目詳細(WEB画面) 93 1ページ目 ア 事業要旨 本事業では、これまでに実施してきた身体障害者補助犬(以下、補助犬とする)調査の知見及び補助犬使用者・訓練事業者の補助犬普及への取組実態から、補助犬が普及しない課題の構造についての検討を行った。 また、近年多発する自然災害の避難の際の補助犬使用者のあり方についても実態を把握した。 今年度調査で整理した内容や分析、考察について、以下に要旨を整理する。 《障害当事者・補助犬使用者及び関係者の実態》 ・補助犬を使用していない人の使用希望は少ない。その理由は「面倒を見るのが大変」や「現在使用している補装具で充分」などである(令和元年調査での障害当事者アンケート) ・補助犬使用の情報発信方法は、「TV/ラジオ等の啓発コマーシャル」で、誰もが目・耳にする情報媒体があげられた(令和元年調査での障害当事者アンケート) ・補助犬使用について知りたい情報は、「申請や準備など」や「犬との生活や訓練」である(令和元年調査での障害当事者アンケート) ・自治体への補助犬使用の相談は盲導犬が主であり、介助犬や聴導犬は少ない(令和3年度身体障害者補助犬育成促進事業等実施実態調査結果(日本補助犬情報センター)) ・盲導犬は知っているが介助犬・聴導犬の認知度は低い(令和5年調査での専門職アンケート) ・専門職が補助犬使用についての相談を受けることは少なく、それは「ニーズがない」や「知識がない」ためである(令和5年調査での専門職アンケート) ・普及活動は、障害者イベントなどの「障害者が自立生活に必要な補装具等を考えるタイミング」にアプローチ(本年度訓練事業者ヒアリング) ・補助犬使用を知るきっかけ(普及)には、使用者が大きな役割を果たしている(本年度訓練事業者ヒアリング) ・自治体や支援団体への問い合わせがあった際、平等に訓練事業者につなげるシステムが望まれている(本年度訓練事業者ヒアリング) ・コロナ禍を除いて、希望者、育成頭数等の変化はあまりないが、実働頭数が減少している実態を踏まえて補助犬の将来に対する危機感がある(本年度訓練事業者ヒアリング) 2ページ目 《幅広い世代に補助犬の使用を知ってもらうための課題分析》 補助犬の使用を希望することを考える際には、自立生活を支援する関係者がその相談先としてあげられるが、実際の相談先・情報源は他の補助犬使用者や補助犬訓練事業者である。 補助犬使用の普及にかかる課題の構造的整理と関係者が担うべき役割は以下のとおりと考えられる。 補助犬使用の普及にかかる課題の構造的整理と各者が担うべき役割 以下、図で示している。 補助犬使用希望者 課題 ・補助犬使用者やメディアで知って希望している ・断念するのは面倒を見るのが大変、補助犬の機能に対するご認識など 補助犬使用者 課題 ・当事者として普及稀有発活動に参加している。 ・SNS等で補助犬使用の有用性を発信している。 担うべき役割 効率的・効果的な「補助犬使用の有用性」にかかる情報の発信 障害に係る専門職 課題 ・障害者の自立生活を支援する立場であるが、補助犬使用については相談等に乗れていない ・補助犬使用についての知識が不足しており、学ぶ場も少ない 担うべき役割 補助犬使用について相談・助言をするための知識の習得 自治体福祉担当者 課題 ・補助犬使用の相談窓口であるが、介助犬・聴導犬に関しては未だ不十分。 ・希望者を訓練事業者に平等かつ効率的につなげるシステムが必要。 担うべき役割 補助犬使用について相談を効率的に図っていくためのシステム構築が必要(支援者・障害者団体、訓練事業者等との連携) 補助犬訓練事業者 課題 ・希望者へのアプローチを行っているが、質を担保した育成を実施のために育成頭数が限られる。 ・育成頭数には使用者へのフォロー、代替の育成等を合わせると、新規を育成する頭数は限られる。 ・つまり、育成体制(人材の確保)が喫緊の課題であるが、魅力ある報酬や職場構築が必要である。 ・事業者間の課題共有も必要。 担うべき役割 ・人材の確保による補助犬の育成体制の構築 ・多面的な課題への取組ための事業者間の情報共有 ・補助犬使用について相談を効率的に図っていくためのシステム構築が必要(自治体、支援者・障害者団体等との連携) 支援者・障害者団体 課題 ・希望者に補助犬使用について適正な情報を提供することが必要。 ・自治体と連携して、希望者を訓練事業者につなぐことが必要。 担うべき役割 補助犬使用について相談を効率的に図っていくためのシステム構築が必要(自治体・訓練事業者等との連携) 補助犬使用希望者が補助犬に抱いている課題:補助犬使用についての正しい知識を得る機会が少ない 補助犬使用者が補助犬使用希望者に抱いている現状:補助犬使用についてのスピーカーとなっている 障害に係る専門職が補助犬使用希望者に抱いている課題:補助犬使用についての相談に乗れていない 障害に係る専門職が補助犬に抱いている課題:補助犬使用についての知識がない 障害に係る専門職、自治体福祉が補助犬訓練事業者に抱いている課題:使用希望者と「効率的・効果的な繋ぎ」ができていない 補助犬訓練事業者が補助犬使用希望者に抱いている課題:補助犬使用を考えるための機会の提供がシステム化されていない 3ページ目 イ 事業目的 補助犬の実働頭数は近年減少傾向にあり、その要因として補助犬ユーザーの高齢化が指摘されている。一方で、補助犬の普及を図るためには、幅広い世代が補助犬の有用性を知る必要があるが、施設への入店の際には補助犬同伴の受入が義務付けられていても同伴拒否の事例が後を絶たず、社会として補助犬を受け入れることについても働きかけを行っていくことが必要である。  弊社では、これまでの障害者総合福祉推進事業でも以下のとおり、補助犬の普及・啓発に取り組んできた。  令和5年度:身体障害者補助犬の専門職のかかわりに関する調査研究  令和4年度:身体障害者補助犬の効果的な普及啓発及び訓練並びに認定の平準化に関する調査研究  令和3年度:身体障害者補助犬の訓練及び認定等のあり方に関する調査研究  令和元年度:身体障害者補助犬の普及啓発のあり方に関する調査研究 これらの業務では、補助犬の認知度や訓練・認定のあり方、専門職のかかわりなどを調査し、その結果に基づきリーフレットを作成・配布するなど、補助犬の普及・啓発を行ってきた。 令和6年度の本事業においては、過年度の調査結果も踏まえるとともに、補助犬使用者・訓練事業者の取組実態を把握し、補助犬が普及しない(頭数が増加しない)「課題の構造」を明らかにすることを目的とした。 また、令和元年度に作成したリーフレットをもとに、補助犬使用希望者に向けた新たなリーフレットを作成した。 加えて、近年は自然災害が各地で発生しているが、災害発生時に利用する避難所での障害者対応について、実体験や避難訓練での体験をもとに実態を把握し、「災害時における身体障害者補助犬使用者への配慮徐行についてのリーフレット」を作成した。 併せて、令和4年度調査で作成した同伴受け入れのための啓発リーフレットをリバイスした。 作成したリーフレットは、基礎自治体や補助犬使用者団体、訓練事業者等へ配布し、補助犬の普及・啓発に努めている。 5ページ目 ウ 事業の実施内容 1.幅広い世代に補助犬の使用について知ってもらうための調査等の実施 1-1.身体障害者補助犬の普及にかかる調査 補助犬の実働頭数は、近年減少傾向にあり、補助犬ユーザーの高齢化が一因であるという指摘がある一方で、普及を図っていくためには、幅広い世代に補助犬の有用性を知っていただく必要がある。一方で、施設等における補助犬の同伴の受入が義務付けられているものの、同伴拒否の事例が後を絶たない状況にあり、社会の受入についても働きかけを引き続き行っていく必要がある。 こうした背景を踏まえ、本事業では、補助犬が普及しない「課題の構造」を明らかにするとともに、課題を踏まえ、補助犬使用希望者に向けたツールの作成を行った。 (1) 補助犬の実働頭数・育成頭数の推移 01 盲導犬 ■全国の盲導犬の実働頭数の推移 2023年度末時点の全国の盲導犬の実働頭数は796頭で、2009年度末の1,070頭をピークに、近年減少傾向にある。 グラフ 2000年875頭、2005年952頭、2019年1070頭(ピーク)、2010年1067頭、2015年966頭、2020年861頭、2023年796頭 6ページ目 ■各年の盲導犬の育成頭数の推移 2023年度の全国の盲導犬の育成頭数は100頭で、2008年度の185頭をピークに、近年減少傾向にある。 グラフ 2000年124頭、2005年128頭、2008年185頭(ピーク)、2010年138頭、2015年140頭、2020年103頭、2023年100頭 7ページ目 ■新規/代替別に見た各年の盲導犬の育成頭数の推移 2023年度に全国で育成された盲導犬のうち新規ユーザーとペアになった割合は27%である。この割合は、近年減少傾向にある。 グラフ 2000年新規48%、代替52%、2005年新規45%、代替55%、2010年新規38%、代替62%、2015年新規38%、代替62%、2020年新規23%、代替77%、2023年新規27%、代替73% 8ページ目 ■全国の実働頭数の推移 全国の実働頭数は、介助犬59頭、聴導犬53頭、合計112頭となっている。近年減少傾向にある。 グラフ 介助犬 2017年71頭、2018年75頭、2019年65頭、2020年62頭、2021年60頭、2022年58頭、2023年57頭、2024年59頭 聴導犬 2017年75頭、2018年74頭、2019年68頭、2020年69頭、2021年63頭、2022年63頭、2023年56頭、2024年53頭 ■育成頭数の推移 2023年度の全国の介助犬・聴導犬の育成頭数はそれぞれ7頭及び9頭である。聴導犬については近年育成頭数が若干少ない傾向がみられる。 グラフ 介助犬 2013年13頭、2014年9頭、2015年6頭、2016年5頭、2017年14頭、2018年4頭、2019年9頭、2020年13頭、2021年11頭、2022年11頭、2023頭9頭 聴導犬 2013年8頭、2014年7頭、2015年9頭、2016年15頭、2017年9頭、2018年8頭、2019年3頭、2020年3頭、2021年6頭、2022年2頭、2023年7頭 10ページ目 (2) 補助犬の使用希望にかかる実態の整理(既往調査からの整理) 01 補助犬を使用していない障害当事者の実態 補助犬を使用している障害当事者が、補助犬を使用することに対してどのように感じているのかを既往調査の結果から整理を行った。 ■整理した既往調査 令和元年度障害者総合福祉推進事業「身体障害者補助犬の普及・啓発のあり方に関する調査研究」実施主体/社会システム梶i補助犬を使用していない人に対する補助犬の使用希望やその課題等に関するアンケート調査。全盲70、弱視39、肢体不自由33、聴覚・言語36、その他1の合計179票の回答を得た。) ■整理のポイント ・補助犬を使用していない障害者は、なぜ補助犬使用をしないのか ・どんな情報があれば補助犬使用について検討するのか ・どんな情報手段が有効か 02 自治体の補助犬使用希望者に対する対応の実態 補助犬使用を希望している障害当事者が、自治体の窓口等への相談等の機会等について、既往調査の結果から整理を行った。 ■整理した既往調査 2021年度「身体障害者補助犬育成促進事業等実施実態調査結果」実施主体/特定非営利活動法人 日本補助犬情報センター(47都道府県のうち46都道府県からの回答を得ている。) ■整理のポイント ・補助犬使用者への対応実態 03 障害者の自立生活に関わる専門職の対応の実態 障害者の自立生活に関わる専門職が、補助犬についての認識があるか、また相談等の実態について、既往調査の結果から整理を行った。 ■整理した既往調査 令和5年度障害者総合福祉推進事業「身体障害者補助犬の専門職の関わりに関する調査研究」実施主体/社会システム梶i専門職に対する身体障害者補助犬についてのアンケート調査を実施。専門職として調査対象である理学療法士100、作業療法士931、言語聴覚士515、社会福祉士84、歩行訓練士22、その他41の回答を得た。) ■整理のポイント ・補助犬の認知度 ・補助犬使用についての相談の実態 11ページ目 (3) 補助犬使用者から見た「補助犬使用の希望」にかかる実態(アンケート調査の実施) 01 補助犬使用者アンケートの実施方針 補助犬の使用希望について、補助犬使用者が実際に体験した内容(知ったきっかけ、補助犬使用に至る経緯、補助犬の有用性等)について把握するため、補助犬使用者を対象にアンケート調査を実施した。 ■対象者 ユーザー団体、訓練事業者を通じて、全国の補助犬使用者への配布を行った。 ※介助犬・聴導犬使用者に対しては、webアンケートページ案内の送付、盲導犬使用者に対しては、メール本文への調査票の書込み(テキストデータも併用)メールの送付を行った。 02 補助犬使用者アンケートの内容 (1)ユーザーご自身と補助犬について (2)補助犬を知ったきっかけについて (3)補助犬と暮らすことの有用性について (4)周知の取組について (5)補助犬同伴時の受入実態(過去1年間)について ※(5)は令和4年度に弊社が実施した調査事業でも伺った内容 12ページ目 (4) 訓練事業者の使用希望への対応等にかかる実態(ヒアリング調査の実施) 01 訓練事業者ヒアリングの実施方針 補助犬の使用希望へ対応している訓練事業者の補助犬の普及啓発の実態、イベント等の実施状況、普及にかかる課題等について把握するため、ヒアリング調査を実施した。 ■対象事業者 盲導犬訓練事業者、介助犬訓練事業者、聴導犬訓練事業者合計7団体(日本盲導犬協会、日本ライトハウス訓練所、日本補助犬協会、日本介助犬協会、兵庫介助犬協会(千葉介助犬協会)、日本聴導犬協会、ドッグフォーライフジャパン)に対するヒアリング調査を実施した。 調査は、訪問及びオンラインで実施した。 02 ヒアリングの実施内容 (1)補助犬の普及啓発の実施 01希望者へのアプローチ ・どんな取組をしているか(場所、内容、頻度等) ・当事者団体へのアプローチ ・アプローチの効果 ・アプローチを行う上での課題 02希望者の要望に対する対応 ・希望者からの主な要望 ・訓練への取り入れ、課題点 03その他 ・補助犬の普及に対する課題 ・その他普及にかかる工夫、取組み (2)普及啓発イベントについて 01イベントの概要 ・イベントの概要(目的、来訪者の属性、イベントの概要) ・運営の実態(運営形態、連携している自治体・団体等、運営の課題) 02効果及び課題 ・普及(利用希望者の拡大)に対する効果 ・啓発(補助犬使用への理解)に対する効果 ・補助犬ユーザーの参画及びイベントにおける役割 ・来訪者の反応(効果、得られたニーズ、得られた課題) (3)普及にかかる課題 01普及の実態 ・訓練/認定の実態(訓練頭数/認定頭数、希望者(待機者)の状況等) 02普及にあたっての課題 ・普及が進まない理由 ・希望者が挙げる課題点 ・普及を推進するにあたっての課題 (4)その他 01補助犬の啓発の実態 ・啓発活動の実態(活動の内容、頻度、課題等) ・入店拒否等の実態(拒否の内容、対応の事例、課題等) 02啓発活動を推進するにあたっての課題 13ページ目 1-2.幅広い世代に補助犬の使用について知ってもらうための課題の整理 1-1で実施、整理した補助犬の使用にかかる理解や啓発等の実態から、補助犬使用の普及にかかる課題を構造的に整理するとともに、補助犬使用に関わる関係各者が担うべき役割について整理した。(分析結果はP.45参照) 1-3.使用希望者に向けた周知ツールの作成 使用希望者に向けた周知ツールとしては、令和元年度にチラシを作成しているが、本チラシの内容をベースとして、1-1、1-2の調査分析結果を受け、周知ツールを作成した。(掲載内容の検討結果はP.47参照、成果物(リーフレット)はP.84参照) 14ページ目 2.災害時の身体障害者補助犬使用者への配慮事項についての調査等の実施 2-1.避難や避難訓練への参加経験のある補助犬使用者の実態調査の実施(ヒアリング調査) 令和6年1月に発生した能登半島地震でも、被災者の多くが避難所での暮らしを余儀なくされているが、避難所における障害者の対応は取組みが進んでいる自治体はあるものの、未だ遅れている状況も否めない。 そこで、本事業では地震等の災害により避難所への避難を余儀なくされた補助犬使用者、また避難所生活も含めた避難訓練に参加経験のある補助犬使用者に対してヒアリング調査を実施し、実態を把握した。 ■ヒアリング対象者 01避難所生活経験者(盲導犬使用者及び能登町、能登半島地震での避難) 02避難訓練経験者(盲導犬使用者、島根県避難訓練等への参加経験) ■ヒアリング内容 (1)災害への事前の備え ・災害に備えてどのような事前準備をしていたか(補助犬との避難に関する特別な準備) (2)被災状況 ・どのような被災状況だったか(どこにいたか、誰と一緒にいたかなど) ・避難した場所と、そこへ避難した理由 ・補助犬と一緒に行動する上で特に注意した点 ・訓練事業者、自治体、その他の支援団体からのサポートはあったか。役に立った支援はあったか。 ・避難にあたって課題となったこと (3)避難所での状況(避難所へ行った方) ・避難所では、補助犬と一緒にいることに対してどのような対応を受けたか ・避難所のスタッフや他の避難者からの反応はどうだったか ・避難所での補助犬のケアに関する課題はあったか(食事やトイレなど) ・補助犬にとっての避難所の環境の改善点 (4)好事例等 ・避難にあたって良かった対応 ・避難にあたって、このようにしてほしかった対応 ・将来の災害に備えて講じている改善策や対策(特に補助犬との避難に関する工夫など) 15ページ目 2-2.補助犬使用者が抱える災害時への不安の実態(アンケート・ヒアリング調査) 実際の被災体験や避難訓練への参加経験のある補助犬使用者がいる一方、こうした経験がなく災害時における対応に不安を抱えている補助犬使用者の実態を把握するため、アンケート・ヒアリング調査を実施した。 ■アンケート・ヒアリング対象者 盲導犬使用者、介助犬使用者、聴導犬使用者の3名(いずれも、本事業で設置した検討会委員である) ■アンケート・ヒアリング内容 1.地震などの災害が発生して避難所に避難することとなった場合について、避難経路、避難場所などについては知っていますか。 2.知っている場合、避難経路については、だれと、どのように避難するかを自治体や地域の方と相談して決めていますか。その時、補助犬をどのように同伴するかも決めていますか。決めていない場合、どんなことが不安ですか。 3.避難場所について知っている場合、避難所に補助犬を同伴することを自治体や地域の方はあらかじめ理解していますか。理解している場合、どんな対応が必要かを自治体や地域の方に確認していますか、あるいはそれについて相談しましたか。 4.避難所での対応についてあらかじめ相談していない場合、どんなことが不安ですか。具体的に教えてください。 5.あなたは、災害時を想定した訓練に参加されたことはありますか。その時、補助犬を同伴していましたか。訓練で感じた不安や課題はありますか。 6.補助犬同伴の避難時の各フェーズで想定される課題 ・避難時(避難場所まで) ・避難場所での暮らし ・その他 2-3.自治体等に向けた災害時の身体障害者補助犬使用者への配慮事項についての周知ツールの作成 2-1、2-2で実施したアンケート・ヒアリング調査の結果を受け、災害時の身体障害者補助犬使用者への配慮事項についての周知ツールを作成した。(成果物(リーフレット)はP.87参照) 3.障害者差別解消法の改正に伴う過年度作成リーフレットのリバイス 令和4年度に作成した、補助犬同伴者の受入にかかる業態別リーフレットについて、今年、障害者差別解消法が改正されたことから、その内容を追加してリバイスを行った。(成果物(リーフレット)はP.88参照) 17ページ目 エ.調査等の結果 1.幅広い世代に補助犬の使用について知ってもらうための調査等の結果 1-1.補助犬の使用希望にかかる既往調査の整理結果 (1) 補助犬を使用していない障害当事者の実態 補助犬を使用している障害当事者が、補助犬を使用することに対してどのように感じているのかを既往調査(※)の結果から整理を行った。 ※令和元年度障害者総合福祉推進事業「身体障害者補助犬の普及・啓発のあり方に関する調査研究」実施主体/社会システム梶i補助犬を使用していない人に対する補助犬の使用希望やその課題等に関するアンケート調査。全盲70、弱視39、肢体不自由33、聴覚・言語36、その他1の合計179票の回答を得た。) 実態1 使用希望者は少なく、「面倒を見るのが大変」「現在の補装具で十分」がその理由 ・アンケート調査では、「使用は考えていない」が69.8%であるのに対し、「すぐにでも使用したい」は4.5%とわずかであった。 ・4.5%の使用希望者は聴覚障害、弱視が主であった。 ・使用を考えていない人の理由としては、「面倒を見るのが大変」が35.8%、「現在の補装具で十分」が32.8%であった。 グラフ 補助犬の使用希望 すぐにでも使用したい4.5パーセント、いずれ使用したい18.4パーセント、使用は考えていない69.8パーセント、その他7.3パーセント グラフ 使用を考えていない人の理由 現在使用している補装具で十分だから32.8パーセント、補助犬が役立つとは考えられないから4.5パーセント、補助犬は不足しているから1.5パーセント、補助犬の面倒を見るのが大変そうだから35.8パーセント、補助犬が吠えて周囲に迷惑がかかりそうだから0.7パーセント、補助犬が衛生的に問題があるから0.7パーセント、その他23.9パーセント 実態2 補助犬使用にかかる情報発信方法へのニーズは「TV・ラジオ等の啓発コマーシャル」が最も多く、だれもが目・耳のする情報媒体が挙げられた ・補助犬使用の情報をどんな情報発信で知りたいかの問には、「TV・ラジオ等の啓発コマーシャル」が35.9%、次いで「補助犬使用について理解できるイベント等の実施」が26.8%であり、特定の支援者からの情報よりも、広く誰もが目・耳にする媒体等での情報へのニーズが高かった。 ・「相談支援専門員によるレクチャー」を挙げたのは、全盲、弱視、車椅子使用者であった。 グラフ 啓発活動の情報発信方法へのニーズ 自治体などのホームページでの発信9.2パーセント、補助犬使用について理解できるイベント等の実施26.8パーセント、相談支援専門員によるレクチャー12.4パーセント、テレビやラジオなどの啓発コマーシャル等35.9パーセント、自治体広報誌などでの紹介7.2パーセント、自治体がSNSなどを使って定期的に発信する3.3パーセント 18ページ目 実態3 補助犬使用について知りたい情報としては、「申請や準備など」「犬との生活や訓練」などに関心が集まった ・「申請や準備」としては、費用、申請方法、補助、訓練事業者の特徴、必要な事前準備などが挙げられた。 ・「犬との生活や訓練」としては、補助犬使用者の体験が知りたい、排泄等の世話への不安、病気になったときの対応、家族の理解、飼育にかかる費用などが挙げられた。 ・その他に社会の理解の改善が必要、受け入れ拒否を受けた場合の対応なども挙げられた。 A 自治体の補助犬使用希望者に対する対応の実態 補助犬使用を希望している障害当事者が、自治体の窓口等への相談等の機会等について、既往調査(※)の結果から整理を行った。 ※2021年度「身体障害者補助犬育成促進事業等実施実態調査結果」実施主体/特定非営利活動法人 日本補助犬情報センター(47都道府県のうち46都道府県から回答を得ている。) (2) 自治体の補助犬使用希望者に対する対応の実態 補助犬使用を希望している障害当事者が、自治体の窓口等への相談等の機会等について、既往調査(※)の結果から整理を行った。 ※2021年度「身体障害者補助犬育成促進事業等実施実態調査結果」実施主体/特定非営利活動法人 日本補助犬情報センター(47都道府県のうち46都道府県から回答を得ている。) 実態 自治体への補助犬使用の相談は盲導犬が主であり、介助犬・聴導犬の相談は少ない。 ・過去10年間に補助犬使用にかかる相談希望を受けている自治体(回答自治体46)は、盲導犬では7〜8割に上るが、介助犬は2〜4割、聴導犬は1〜2割にとどまっている。 ・また、補助犬育成補助事業として実施されたのは、盲導犬は5〜6割が1〜3件、介助犬は7〜8割が0件、聴導犬も7〜9割が0件であった。 グラフ 盲導犬過去10年間に関する希望相談の有無 都道府県 2010〜2020年度 2010年 あり74パーセント、なし26パーセント 2011年 あり79パーセント、なし21パーセント 2012年 あり79パーセント、なし21パーセント 2013年 あり68パーセント、なし32パーセント 2014年 あり81パーセント、なし19パーセント 2015年 あり72パーセント、なし24パーセント、無回答4パーセント 2016年 あり79パーセント、なし21パーセント 2017年 あり78パーセント、なし15パーセント、その他2パーセント、無回答4パーセント 2018年 あり70パーセント、なし28パーセント、無回答2パーセント 2021年 あり76パーセント、なし24パーセント (2019、2020はコロナ禍で調査なし) グラフ 介助犬過去10年間に関する希望相談の有無 都道府県 2010〜2020年度 2010年 あり34パーセント、なし66パーセント 2011年 あり40パーセント、なし60パーセント 2012年 あり38パーセント、なし62パーセント 2013年 あり28パーセント、なし72パーセント 2014年 あり36パーセント、なし64パーセント 2015年 あり19パーセント、なし68パーセント、無回答13パーセント 2016年 あり17パーセント、なし83パーセント 2017年 あり21パーセント、なし72パーセント、無回答6パーセント 2018年 あり22パーセント、なし72パーセント、無回答7パーセント 2021年 あり22パーセント、なし76パーセント、無回答2パーセント (2019、2020はコロナ禍で調査なし) グラフ 聴導犬過去10年間に関する希望相談の有無 都道府県 2010〜2020年度 2010年 あり17パーセント、なし83パーセント 2011年 あり19パーセント、なし81パーセント 2012年 あり34パーセント、なし66パーセント 2013年 あり15パーセント、なし85パーセント 2014年 あり28パーセント、なし72ーセント 2015年 あり13パーセント、なし74パーセント、無回答13パーセント 2016年 あり23パーセント、なし77パーセント 2017年 あり11パーセント、なし83パーセント、無回答6パーセント 2018年 あり7パーセント、なし87パーセント、無回答7パーセント 2021年 あり7パーセント、なし91パーセント、無回答2パーセント (2019、2020はコロナ禍で調査なし) 19ページ目 グラフ 盲導犬育成補助事業実施件数 2010〜2021年度 2010年 0件27パーセント、1〜3件57パーセント、4〜6件9パーセント、7件以上7パーセント 2011年 0件28パーセント、1〜3件60パーセント、4〜6件10パーセント、7件以上2パーセント 2012年 0件23パーセント、1〜3件64パーセント、4〜6件13パーセント 2013年 0件34パーセント、1〜3件51パーセント、4〜6件9パーセント、7件以上6パーセント 2014年 0件28パーセント、1〜3件53パーセント、4〜6件15パーセント、7件以上2パーセント、不明2パーセント 2015年 0件34パーセント、1〜3件55パーセント、4〜6件4パーセント、7件以上7パーセント 2016年 0件30パーセント、1〜3件60パーセント、4〜6件7パーセント、7件以上3パーセント 2017年 0件23パーセント、1〜3件66パーセント、4〜6件4パーセント、7件以上2パーセント、不明4パーセント 2018年 0件30パーセント、1〜3件61パーセント、4〜6件4パーセント、7件以上4パーセント 2021年 0件32パーセント、1〜3件64パーセント、4〜6件2パーセント、7件以上3パーセント (2019、2020はコロナ禍で調査なし) グラフ 介助犬育成補助事業実施件数 2010〜2021年度 2010年 0件83パーセント、1〜3件17パーセント 2011年 0件79パーセント、1〜3件21パーセント 2012年 0件81パーセント、1〜3件19パーセント 2013年 0件77パーセント、1〜3件23パーセント 2014年 0件79パーセント、1〜3件21パーセント 2015年 0件77パーセント、1〜3件8パーセント、4〜6件15パーセント 2016年 0件89パーセント、1〜3件11パーセント 2017年 0件81パーセント、1〜3件19パーセント 2018年 0件87パーセント、1〜3件11パーセント、不明2パーセント 2021年 0件85パーセント、1〜3件15パーセント (2019、2020はコロナ禍で調査なし) グラフ 聴導犬育成補助事業実施件数 2010〜2021年度 2010年 0件89パーセント、1〜3件11パーセント 2011年 0件89パーセント、1〜3件11パーセント 2012年 0件77パーセント、1〜3件23パーセント 2013年 0件83パーセント、1〜3件17パーセント 2014年 0件81パーセント、1〜3件19パーセント 2015年 0件81パーセント、1〜3件4パーセント、4〜6件15パーセント 2016年 0件77パーセント、1〜3件23パーセント 2017年 0件89パーセント、1〜3件11パーセント 2018年 0件96パーセント、1〜3件4ーセント 2021年 0件94パーセント、1〜3件6パーセント (2019、2020はコロナ禍で調査なし) (3) 障害者の自立生活に関わる専門職の対応の実態 障害者の自立生活に関わる専門職が、補助犬についての認識があるか、また相談等の実態について、既往調査(※)の結果から整理を行った。 ※令和5年度障害者総合福祉推進事業「身体障害者補助犬の専門職の関わりに関する調査研究」実施主体/社会システム梶i専門職に対する身体障害者補助犬についてのアンケート調査を実施。専門職として調査対象である理学療法士100、作業療法士931、言語聴覚士515、社会福祉士84、歩行訓練士22、その他41の回答を得た。) 実態1 盲導犬は知っているものの、介助犬・聴導犬についての認知度は低い ・理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、社会福祉士、歩行訓練士を対象としたアンケート調査の結果、盲導犬については「名前・役割ともに知っている」が91.1%であったが、介助犬は61.8%、聴導犬は46.0%にとどまっていた。 ・実際に、補助犬使用について学んだ場面は「業務外の自主的な学習」38.1%と最も多いのに対し、「大学・専門学校・養成学校等の授業」は19.4%であった。 グラフ 補助犬の認知度 盲導犬 名前・役割ともに知っている91.1パーセント、名前だけ知っている8.4パーセント、名前・役割ともに知らない0.4パーセント 介助犬 名前・役割ともに知っている61.8パーセント、名前だけ知っている33.0パーセント、名前・役割ともに知らない5.2パーセント 聴導犬 名前・役割ともに知っている46.0パーセント、名前だけ知っている25.1パーセント、名前・役割ともに知らない28.9パーセント 20ページ目 実態2 専門職が補助犬の使用について相談を受けている例は少なく、その理由は「ニーズがない」「知識がない」 ・障害者の自立支援の相談に乗る・助言をしたことがあるのは、全体の60%程度であるが、そのうち、補助犬の使用が含まれているのは、歩行訓練士は72.7%あったものの、全体では6.5%と非常に少ない。 ・相談に乗る・助言をすることに「補助犬の使用」が含まれていない理由は、「補助犬使用のニーズがない」「補助犬についての知識がない」が多く挙げられた。 グラフ 補装具・生活のあり方等の具体的な相談・助言の有無 合計 これまでにしていたことがある25.8パーセント、現在している35.0パーセント、今後していく予定がある10.5パーセント、今も今後もする予定はない28.7パーセント 理学療法士 これまでにしていたことがある25.0パーセント、現在している42.0パーセント、今後していく予定がある4.0パーセント、今も今後もする予定はない29.0パーセント 作業療法士 これまでにしていたことがある28.3パーセント、現在している39.9パーセント、今後していく予定がある8.0パーセント、今も今後もする予定はない23.8パーセント 言語聴覚士 これまでにしていたことがある20.9パーセント、現在している26.5パーセント、今後していく予定がある13.6パーセント、今も今後もする予定はない39.0パーセント 社会福祉士 これまでにしていたことがある34.5パーセント、現在している16.7パーセント、今後していく予定がある21.4パーセント、今も今後もする予定はない27.4パーセント 歩行訓練士 これまでにしていたことがある22.7パーセント、現在している77.3パーセント グラフ 「相談に乗る・助言をする」の中に、補助犬の使用が含まれるか 合計 含まれている6.5パーセント、含まれていない93.2パーセント 理学療法士 含まれている1.5パーセント、含まれていない98.5パーセント 作業療法士 含まれている3.8パーセント、含まれていない95.9パーセント 言語聴覚士 含まれている4.5パーセント、含まれていない95.5パーセント 社会福祉士 含まれている20.9パーセント、含まれていない76.7パーセント、未回答2.4パーセント 歩行訓練士 含まれている72.7パーセント、含まれていない27.3パーセント グラフ 「相談に乗る・助言をする」の中に、補助犬の使用が含まれない理由 合計 補助犬についての知識がないから35.8パーセント、補助犬使用がその障害者に適切であるかを判断できないから17.0パーセント、補助犬使用についてのニーズがないから37.2パーセント、その他9.7パーセント、未回答0.3パーセント 理学療法士 補助犬についての知識がないから40.9パーセント、補助犬使用がその障害者に適切であるかを判断できないから18.2パーセント、補助犬使用についてのニーズがないから24.2パーセント、その他15.2パーセント、未回答1.5パーセント 作業療法士 補助犬についての知識がないから39.1パーセント、補助犬使用がその障害者に適切であるかを判断できないから16.5パーセント、補助犬使用についてのニーズがないから35.8パーセント、その他8.6パーセント 言語聴覚士 補助犬についての知識がないから28.0パーセント、補助犬使用がその障害者に適切であるかを判断できないから18.1パーセント、補助犬使用についてのニーズがないから42.2パーセント、その他10.8パーセント、未回答0.9パーセント 社会福祉士 補助犬についての知識がないから33.3パーセント、補助犬使用がその障害者に適切であるかを判断できないから15.2パーセント、補助犬使用についてのニーズがないから48.5パーセント、その他3.0パーセント 歩行訓練士 補助犬についての知識がないから16.7パーセント、補助犬使用がその障害者に適切であるかを判断できないから66.7パーセント、補助犬使用についてのニーズがないから16.7パーセント 21ページ目 1-2.補助犬使用者から見た「補助犬使用の希望」にかかるアンケート調査の結果 本アンケート調査は、補助犬ユーザーが、補助犬を知り、補助犬との暮らしを始めるに至ったきっかけ、補助犬の有用性、施設等を利用する際の受入実態等について把握することを目的として実施した。 (1) 調査対象 全国の盲導犬・介助犬・聴導犬使用者を対象とした。 (2) 調査方法・内容 全国の盲導犬・介助犬・聴導犬の訓練事業者及び使用者団体に依頼して電子調査票(Word・Text)を配布してもらい、Google formや電子メールで回収した。 調査内容(調査票)は、P.9〜に示す。 (参考)アンケート依頼団体一覧 ・北海道盲導犬協会、東日本盲導犬協会、日本盲導犬協会、アイメイト協会、中部盲導犬協会、日本ライトハウス盲導犬訓練所、関西盲導犬協会、兵庫盲導犬協会、九州盲導犬協会、いばらき盲導犬協会(盲) ・日本補助犬協会(盲、介、聴) ・日本介助犬協会、兵庫介助犬協会(介) ・日本聴導犬推進協会(聴) ・日本介助犬福祉協会、日本聴導犬協会、ウェルフェアポート湘南、日本サポートドッグ協会、ドッグフォーライフジャパン(介・聴) ・全日本盲導犬使用者の会、日本介助犬使用者の会、日本聴導犬パートナーの会 (3) 調査実施期間・回収数 調査は令和6年9月〜10月にかけて実施し、72名の補助犬使用者からの回答を得た。 (4) 調査結果の整理 01 回答者の属性 〇年齢 本調査の回答者は、20・30代は少なく、50代以上で全体の70%を占める。 グラフ 29歳以下1パーセント、30歳代7パーセント、40歳代18パーセント、50歳代33パーセント、60歳代24パーセント、70歳以上14パーセント、回答しない3パーセント 22ページ目 〇居住地 回答者の居住地は関東が44%で最も多く、次いで関西、中国、東海。全国の補助犬使用者から回答が得られた。 グラフ 北海道・東北5.6パーセント、関東44.4パーセント、北信越4.2パーセント、東海11.1パーセント、関西19.4パーセント、中国12.5パーセント、四国0パーセント、九州・沖縄1.4パーセント、回答しない1.4パーセント 〇補助犬の種類 回答者の60%程度は盲導犬使用者である。 グラフ 盲導犬57パーセント、介助犬28パーセント、聴導犬15パーセント 〇補助犬使用歴 補助犬使用歴は6〜10年が32%で最も多く、次いで11〜15年、5年未満・16〜20年と、回答者の大半は20年未満の使用歴である。 グラフ 5年未満18パーセント、6から10年32パーセント、11から15年19パーセント、16から20年18パーセント、21から25年6パーセント、26から30年4パーセント、31年以上1パーセント、未回答1パーセント 23ページ目 〇歴代頭数(今は何頭目か) 1頭目(初めての補助犬)及び2頭目が33%、3頭目が25%であり、4頭目以上は少ない。 グラフ 1頭目33パーセント、2頭目33パーセント、3頭目25パーセント、4頭目7パーセント、未回答1パーセント 〇補助犬を連れて外出する頻度(生活圏内外) 日常生活圏域内への補助犬を連れての外出は週5日以上(ほぼ毎日)が最も多く全体の2/3程度、一方で、日常生活圏域外への補助犬を連れての外出は月に1〜3日程度や週1日程度が多く、この2項目で約半数を占める。 グラフ 補助犬を連れて外出する頻度(生活圏内) 週5日以上68パーセント、週2から4日程度21パーセント、週1日程度4パーセント、月1から3日程度4パーセント、未回答1パーセント グラフ 補助犬を連れて外出する頻度(生活圏外) 週5日以上8パーセント、週2から4日程度24パーセント、月1から3日程度29パーセント、数か月に1日程度11パーセント、数か月に1日程度未満3パーセント、未回答3パーセント 24ページ目 02 補助犬を知ったきっかけ 〇補助犬を初めて知ったきっかけ 補助犬を初めて知ったきっかけ、「テレビで見た」、「知り合いに補助犬ユーザーがいた」、「補助犬とユーザーを実際に見かけた」の順に多い。 犬種別ではやや傾向が異なり、以下のようになっている。盲導犬ユーザーは「テレビで見た」がトップであり、上位に「インターネットで調べた」は出てこないが、介助犬・聴導犬ユーザーは「インターネットで調べた」が上位に出てきている。 《盲導犬》 01テレビで見た(19)、02補助犬とユーザーを実際に見かけた(16)、03知り合いに補助犬ユーザーがいた(14) 《介助犬》 01インターネットで調べた(7)、02本や雑誌で読んだ・テレビで見た・補助犬とユーザーを実際に見かけた(6) 《聴導犬》 01知り合いに補助犬ユーザーがいた(7)、02インターネットで調べた・テレビで見た・補助犬とユーザーを実際に見かけた(2) グラフ 補助犬を初めて知ったきっかけ インターネットで調べた 全体15(27パーセント)、盲導犬6(15パーセント)、介助犬7(35パーセント)、聴導犬2(18パーセント) 新聞記事を読んだ 全体2(3パーセント)、介助犬2(10パーセント) 本や雑誌で読んだ 全体18(25パーセント)、盲導犬12(29パーセント)、介助犬6(30パーセント) テレビで見た 全体27(38パーセント)、盲導犬19(46パーセント)、介助犬6(30パーセント)、聴導犬2(18パーセント) ラジオで聞いた 全体7(10パーセント)、盲導犬7(17パーセント) 補助犬とユーザーを実際に見かけた 全体24(33パーセント)、盲導犬16(39パーセント)、介助犬6(30パーセント)、聴導犬2(18パーセント) 特別支援学校やリハビリセンターで知った 全体10(14パーセント)、盲導犬10(24パーセント) 一般の人向けのイベントで知った 全体6(8パーセント)、盲導犬2(5パーセント)、介助犬4(20パーセント) 障害当事者向けのイベントで知った 全体12(17パーセント)、盲導犬7(17パーセント)、介助犬4(20パーセント)、聴導犬1(9パーセント) 知り合いに補助犬ユーザーがいた 全体26(36パーセント)、盲導犬14(34パーセント)、介助犬5(25パーセント)、聴導犬7(64パーセント) 自治体の担当者から話を聞いた 全体3(4パーセント)、盲導犬1(2パーセント)、聴導犬2(18パーセント) 通院先の専門職から聞いた 全体8(5パーセント)、盲導犬4(10パーセント)、介助犬3(15パーセント)、聴導犬1(9パーセント) 覚えていない 全体3(4パーセント)、盲導犬2(5パーセント)、聴導犬1(9パーセント) 25ページ目 〇補助犬との暮らしを詳しく知ったきっかけ 補助犬との暮らしを詳しく知ったきっかけとしては、「補助犬の訓練事業者から話を聞いた」が多く、「補助犬ユーザーから聞いた」が続く。 犬種別で見ても、この2つの項目を挙げる回答者が多い。 グラフ 補助犬を詳しく知ったきっかけ 補助犬ユーザーから聞いた 全体36(50パーセント)、盲導犬20(49パーセント)、介助犬9(45パーセント)、聴導犬7(64パーセント) 補助犬ユーザーの発信を読んだ 全体16(22パーセント)、盲導犬9(22パーセント)、介助犬6(30パーセント)、聴導犬1(9パーセント) 補助犬の訓練事業者から話を聞いた 全体54(75パーセント)、盲導犬33(80パーセント)、介助犬15(75パーセント)、聴導犬6(55パーセント) 自治体の担当者から話を聞いた 全体2(3パーセント)、介助犬2(10パーセント) 覚えていない 全体2(3パーセント)、介助犬1(5パーセント)、聴導犬1(9パーセント) その他 全体4(6パーセント)、盲導犬4(10パーセント) 〇補助犬との暮らしを考えるときに有用だった情報 補助犬との暮らしを考えるときに有用だった情報は、「補助犬と暮らすことのメリットや考えられる課題・注意点」や「補助犬が具体的にどのようにサポートしてくれるのか」、「補助犬との暮らしに必要な準備や日常ケア」といった、実際に暮らすうえでの注意事項等が上位を占めている。 犬種別で見ても、概ねの傾向は同じだが、聴導犬は他の2種と比べて(サンプル数が少ない影響もあるが)「補助犬に対する社会的認知」や「補助犬の引退とその後の生活」の回答割合が高い・「補助犬はどのようにしてもらえるのか」の回答割合が低い傾向がある。 グラフ 補助犬との暮らしを考えるときに有用だった情報 3種類の補助犬の違いや役割 全体9(13パーセント)、盲導犬1(2パーセント)、介助犬5(25パーセント)、聴導犬3(13パーセント) 補助犬が具体的にどのようにサポートしてくれるのか 全体57(79パーセント)、盲導犬32(78パーセント)、介助犬16(80パーセント)、聴導犬9(82パーセント) 補助犬がどのように訓練されるのか 全体41(57パーセント)、盲導犬25(61パーセント)、介助犬10(50パーセント)、聴導犬6(55パーセント) 補助犬が支給される要件・資格 全体40(56パーセント)、盲導犬23(56パーセント)、介助犬12(60パーセント)、聴導犬5(60パーセント) 補助犬はどのようにしてもらえるのか(プロセス) 全体37(51パーセント)、盲導犬21(51パーセント)、介助犬13(65パーセント)、聴導犬3(27パーセント) 補助犬と暮らすことのメリットや考えられる課題・注意点 全体60(83パーセント)、盲導犬35(85パーセント)、介助犬16(80パーセント)、聴導犬9(82パーセント) 補助犬との暮らしに必要な準備や日常ケア 全体51(71パーセント)、盲導犬27(66パーセント)、介助犬15(75パーセント)、聴導犬9(82パーセント) 補助犬の費用と補助制度 全体39(54パーセント)、盲導犬25(61パーセント)、介助犬10(50パーセント)、聴導犬4(36パーセント) 補助犬に対する社会的認知 全体34(47パーセント)、盲導犬19(46パーセント)、介助犬8(40パーセント)、聴導犬7(64パーセント) 補助犬の引退とその後の生活 全体32(44パーセント)、盲導犬16(39パーセント)、介助犬9(45パーセント)、聴導犬7(64パーセント) 補助犬との暮らしについて詳しく知るためにはどこに問い合わせたらよいか 全体18(25パーセント)、盲導犬10(20パーセント)、介助犬4(20パーセント)、聴導犬4(36パーセント) その他 全体3(4パーセント)、盲導犬2(5パーセント)、介助犬1(5パーセント) 26ページ目 〇補助犬を初めて知ったのはユーザーになった時期からどのくらい前か 補助犬を知った時期として、盲導犬ユーザーは10年以上前から知っていた人が多く1/3をしめるなど、比較的前から知っている人が多いのに対し、介助犬・聴導犬ユーザーはユーザーになる5年前以内に知った人が半数を超えており、犬種によって傾向に違いがみられる。 グラフ 補助犬を初めて知った時期(ユーザーとなった時点から) 盲導犬 0から1年前12パーセント、1から3年前17パーセント、3から5年前12パーセント、5から10年前15パーセント、10年前以上34パーセント、わからない10パーセント 介助犬 0から1年前15パーセント、1から3年前40パーセント、3から5年前5パーセント、5から10年前15パーセント、10年前以上25パーセント 聴導犬 0から1年前18パーセント、1から3年前18パーセント、3から5年前18パーセント、5から10年前27パーセント、10年前以上9パーセント、わからない9パーセント 合計 0から1年前14パーセント、1から3年前24パーセント、3から5年前11パーセント、5から10年前17パーセント、10年前以上28パーセント、わからない7パーセント 〇補助犬との暮らしを詳しく知ったのはユーザーになった時期からどのくらい前か 補助犬との暮らしを詳しく知った時期として、盲導犬・介助犬・聴導犬各ユーザーで5年以内が66〜85%程度に上り、ほとんどの人はユーザーとなる少し前に補助犬との暮らしを詳しく知ったことが分かる。犬種別でその割合にはやや違いがあり、盲導犬は〜1年前、介助犬は1〜3年前、聴導犬は3〜5年前である。 グラフ 補助犬を詳しく知った時期(ユーザーとなった時点から) 盲導犬 0から1年前29パーセント、1から3年前27パーセント、3から5年前10パーセント、5から10年前5パーセント、10年前以上17パーセント、わからない・未回答12パーセント 介助犬 0から1年前35パーセント、1から3年前45パーセント、3から5年前5パーセント、5から10年前5パーセント、10年前以上5パーセント、わからない・未回答5パーセント 聴導犬 0から1年前18パーセント、1から3年前9パーセント、3から5年前45パーセント、5から10年前18パーセント、わからない・未回答9パーセント 合計 0から1年前29パーセント、1から3年前29パーセント、3から5年前14パーセント、5から10年前7パーセント、10年前以上11パーセント、わからない・未回答10パーセント 26ページ目 〇もっと早くに補助犬を知っていたら、もっと早く補助犬を希望していたか もっと早くに補助犬を知っていた場合に、もっと早く補助犬を希望したと考えている人は、全体ではや半数程度(「おおいにそう思う」と「ある程度そう思う」の合算)で、希望しなかったと考える人の26%を上回る。 犬種別で見てもこの傾向は同じだが、盲導犬ユーザーでは希望しなかったと考える人の割合が介助犬・聴導犬ユーザーに比べて高い傾向にある。 「あまりそう思わない+全くそう思わない」の割合 盲導犬:36%、介助犬:15%、聴導犬:9% グラフ もっと早く補助犬を知っていたら希望していたか 盲導犬 おおいにそう思う29パーセント、ある程度そう思う12パーセント、どちらともいえない20パーセント、あまりそう思わない24パーセント、全くそう思わない12パーセント、わからない2パーセント 介助犬 おおいにそう思う35パーセント、ある程度そう思う10パーセント、どちらともいえない30パーセント、あまりそう思わない5パーセント、全くそう思わない10パーセント、わからない10パーセント 聴導犬 おおいにそう思う36パーセント、ある程度そう思う36パーセント、どちらともいえない9パーセント、全くそう思わない9パーセント、わからない9パーセント 合計 おおいにそう思う32パーセント、ある程度そう思う15パーセント、どちらともいえない21パーセント、あまりそう思わない15パーセント、全くそう思わない11パーセント、わからない6パーセント 〇もっと早くに補助犬との暮らしを詳しく知る機会があったら、もっと早く補助犬を希望していたか もっと早くに補助犬との暮らしを知る機会があった場合に、もっと早く補助犬を希望したと考えている人は、全体では半数程度(「おおいにそう思う」と「ある程度そう思う」の合算)で、希望しなかったと考える人の23%を上回る。上記、「もっと早く補助犬を知っていたら、もっと早く補助犬を希望していた」とほぼ傾向は同じである。 犬種別で見てもこの傾向は同じだが、盲導犬ユーザーでは希望しなかったと考える人の割合が介助犬・聴導犬ユーザーに比べて高い傾向にある。 「あまりそう思わない+全くそう思わない」の割合 盲導犬:32%、介助犬:15%、聴導犬:9% グラフ もっと早くに詳しく補助犬を知っていたら希望していたか 盲導犬 おおいにそう思う29パーセント、ある程度そう思う12パーセント、どちらともいえない20パーセント、あまりそう思わない24パーセント、全くそう思わない12パーセント、わからない2パーセント 介助犬 おおいにそう思う30パーセント、ある程度そう思う25パーセント、どちらともいえない30パーセント、あまりそう思わない10パーセント、全くそう思わない5パーセント 聴導犬 おおいにそう思う55パーセント、ある程度そう思う18パーセント、どちらともいえない9パーセント、あまりそう思わない9パーセント、わからない9パーセント 合計 おおいにそう思う33パーセント、ある程度そう思う18パーセント、どちらともいえない22パーセント、あまりそう思わない15パーセント、全くそう思わない8パーセント、わからない3パーセント 28ページ目 03補助犬の有用性 〇補助犬と暮らすことによる日常生活の変化 補助犬と暮らすことで、「外出機会が増えた」人がおおく、約半数に上る。加えて、「不安の軽減」や「前向きになった」、「できなかったことができるようになった」とポジティブな意見が上位を占める。一方で、少数ではあるが「明らかに障害者となった」や「世話で忙しくなった」などのネガティブな意見も少しある。 グラフ 補助犬を使用して変わったこと 外出の機会が増えた45.1パーセント、不安の軽減12.7パーセント、前向きになった11.3パーセント、できなかったことができるようになった8.5パーセント、規則正しく生活できるようになった5.6パーセント、健康になった5.6パーセント、コミュニケーションが増えた5.6パーセント、生活の質が高まった1.4パーセント、明らかに障害者となった1.4パーセント ※自由記述をカテゴリー化して集計。 〇補助犬と暮らすことによる心理的な効果 補助犬と暮らすことによる心理的な効果としては、「安心感がある」が多く全体の1/4程度、次いで「前向きになった」、「リラックスできる」、「孤独感の払拭」、「癒される」などが上位を占める。ネガティブな意見としては「周囲の視線が気になるようになった」が挙げられている。 グラフ 補助犬使用による心理的効果 安心感がある23.9パーセント、前向きになった12.7パーセント、リラックスできる8.5パーセント、孤独感の払しょく8.5パーセント、癒される8.5パーセント、楽しい7.0パーセント、落ち着いた5.6パーセント、穏やかな気持ちになった4.2パーセント、生きがい4.2パーセント、幸福感4.2パーセント、自信が付いた4.2パーセント、責任感が付いた4.2パーセント、周囲の視線が気になるようになった2.8パーセント 29ページ目 〇補助犬と暮らすことについて障害当事者に(ユーザーから)伝えたいこと ユーザーから障害当事者に伝えたいこと(補助犬と暮らすことについて)は、突出したものはなく様々な項目・視点から(補助犬と暮らすことについての)伝えたいことが挙げられている。上位は「使用者としての責任があることを知る」や「自治体や訓練事業者に聞いてみることが重要」、「日常生活が充実する」、「補助犬の機能を正しく理解してほしい」など。 グラフ 補助犬を使用していない障害者に伝えたいこと 使用者としての責任があることを知る9.5パーセント、まずは自治体や訓練事業者に話を聞いてみることが重要9.5パーセント、日常生活が充実する7.9パーセント、補助犬の機能を正しく理解してほしい7.9パーセント、選択肢の一つ6.3パーセント、メリット・デメリットを体験してみてほしい6.3パーセント、自由に外出できるすばらしさ4.8パーセント、前向きになる4.8パーセント、まずは体験してほしい4.8パーセント、心強いパートナー3.2パーセント、ストレスがなくなる3.2パーセント、同伴してくれている安心感3.2パーセント、その他28.6パーセント ※自由記述をカテゴリー化して集計。 〇就労にあたっての困りごと 補助犬を持つことが就労に与える影響として、「問題なく就労できた」は30%未満しかおらず、「就労を拒否された」、「就労できたが気を使っている」など、就労に当たっては影響があることが伺える。 グラフ 補助犬同伴の就労の受入 就労を拒否された36.1パーセント、問題なく就労できた27.8パーセント、就労ができたが気を使っている36.1パーセント ※自由記述をカテゴリー化して集計。 30ページ目 04周知の取組 〇どのような機会を活用して補助犬との暮らしを知ってもらうことが有効か 補助犬との暮らしを知ってもらう機会として、「イベントでの紹介や体験会」をあげるユーザーが多く、全体の1/3に上る。また、「障害当事者の集まり」や「日常生活の外出(補助犬を連れて行く)」も一定数存在する。 グラフ どのような機会を活用して補助犬との暮らしを知ってもらうことが有効か イベントでの紹介・体験会31パーセント、メディアやSNS等での発信17パーセント、学校や医療施設での情報発信13パーセント、障害当事者の集まり13パーセント、ユーザーの実態紹介13パーセント、日常生活の外出(補助犬を連れていく)9パーセント、行政機関の相談会2パーセント、訓練施設での紹介・体験会2パーセント ※自由記述をカテゴリー化して集計。 〇ユーザー自身が補助犬の普及や啓発に向けて取り組んでいる活動 ユーザー自身が取り組んでいる活動としては、「積極的に外出して多くの人に補助犬ユーザーとしての自分を見てもらう」が最も多く、ユーザーの実際を見てもらうことこそが最大の普及啓発と考えているユーザーが多くいることが分かる。 当該項目を選択している割合が3犬種全てで最も高い。 グラフ ユーザーとして取り組んでいる普及・啓発活動 補助犬との生活をSNS等で発信 全体34(47パーセント)、盲導犬16(39パーセント)、介助犬12(60パーセント)、聴導犬6(55パーセント) 補助犬に関する講演会やデモンストレーション(一般の人向け) 全体53(74パーセント)、盲導犬33(80パーセント)、介助犬16(80パーセント)、聴導犬4(36パーセント) 補助犬に関する講演会やデモンストレーション(障害当事者向け) 全体21(29パーセント)、盲導犬12(29パーセント)、介助犬6(30パーセント)、聴導犬3(27パーセント) 積極的に外出して多くの人に補助犬ユーザーとしての自分を見てもらう 全体61(85パーセント)、盲導犬36(88パーセント)、介助犬17(85パーセント)、聴導犬8(73パーセント) 補助犬との暮らしを考えている障害当事者の相談に乗っている 全体30(42パーセント)、盲導犬17(41パーセント)、介助犬10(50パーセント)、聴導犬3(27パーセント) その他 全体16(22パーセント)、盲導犬10(24パーセント)、介助犬5(25パーセント)、聴導犬1(9パーセント) 31ページ目 〇補助犬の普及や啓発に向けて効果的だと思う取組 補助犬の普及・啓発に効果的だとユーザーが考えている取り組みは、「講演会・デモンストレーション」が多く、次いで「メディアやSNS等での発信」が多い。また、ユーザー自らの「積極的な外出」も10%程度おり、補助犬が多くの人の目に触れることが普及啓発に効果的と考えていることが伺える。 グラフ 普及・啓発に効果的と考えられる取組 講演会・デモンストレーション51パーセント、メディアやSNS等での発信12パーセント、支援者や事業者への研修・周知9パーセント、積極的な外出9パーセント、行政からの指導(社会の考え方を変える)5パーセント、実際に体験5パーセント、補助犬ユーザーとの接点を増やす4パーセント、金銭的負担の軽減2パーセント、訓練施設からのPR2パーセント ※自由記述をカテゴリー化して集計。 〇障害当事者に伝えるべき補助犬の情報 ユーザーが考える(補助犬を保有していない)障害当事者に伝えるべき補助犬の情報としては、「補助犬と暮らした時にできるようになること」というメリットの部分が多い反面、「補助犬と暮らすことで生じる負担(世話や金銭面)」というデメリットの部分もほぼ同程度おり、メリット・デメリットの双方を正確に情報提供しなければならないことがうかがえる。 グラフ 障害当事者に伝えるべき補助犬の情報 補助犬と暮らすことの良さ・楽しさ・できるようになること24パーセント、補助犬と暮らすことで生じる負担(世話、金銭)22パーセント、補助犬が自分のパートナーであること12パーセント、補助犬の仕事や役割10パーセント、補助犬の正確な情報を得ること5パーセント、補助犬を持つまでの流れ5パーセント、その他22パーセント ※自由記述をカテゴリー化して集計。 32ページ目 05補助犬同伴時の受入実態 〇補助犬を同伴し各施設を利用する頻度(過去1年間) 小売店や交通機関は週に数回程度以上(週5日以上+週2〜4日程度)の利用頻度が概ね30%を超え、他の施設に比べて高く、一方で宿泊施設や医療機関では月1〜3日程度未満(月1〜3日程度+数カ月に1日程度+数カ月に1日程度未満)が80%超えている。 グラフ 補助犬同伴による施設の利用頻度 小売店 週5日以上21パーセント、週2から4日程度31パーセント、週1日程度19パーセント、月1から3日程度17パーセント、数か月に1日程度9パーセント、数か月に1日程度1パーセント 飲食店 週5日以上8パーセント、週2から4日程度21パーセント、週1日程度18パーセント、月1から3日程度32パーセント、数か月に1日程度14パーセント、数か月に1日程度6パーセント 宿泊施設 週5日以上1パーセント、週1日程度3パーセント、月1から3日程度10パーセント、数か月に1日程度37パーセント、数か月に1日程度34パーセント 医療機関 週5日以上1パーセント、週2から4日程度10パーセント、週1日程度7パーセント、月1から3日程度36パーセント、数か月に1日程度29パーセント、数か月に1日程度10パーセント 交通機関 週5日以上13パーセント、週2から4日程度21パーセント、週1日程度18パーセント、月1から3日程度18パーセント、数か月に1日程度19パーセント、数か月に1日程度7パーセント その他の業態すべて 週5日以上14パーセント、週2から4日程度17パーセント、週1日程度14パーセント、月1から3日程度25パーセント、数か月に1日程度15パーセント、数か月に1日程度7パーセント 〇補助犬を同伴して各施設を利用した際に拒否された経験(過去1年間) 小売店・宿泊施設・医療機関・交通機関では、受入を拒否された経験がある人の割合が少なく、0回(=受入を拒否された経験がない)の人が60%を超える。一方で、飲食店では受け入れを拒否された経験がない人は35%にとどまり、2/3程度は受入を拒否された経験がある。 グラフ 補助犬同伴で利用拒否された経験(過去1年間) 小売店 0回62パーセント、1回16パーセント、2から3回19パーセント、4から5回2パーセント、覚えていない2パーセント 飲食店 0回35パーセント、1回23パーセント、2から3回22パーセント、4から5回10パーセント、6回以上9パーセント、覚えていない1パーセント 宿泊施設 0回69パーセント、1回17パーセント、2から3回13パーセント、覚えていない2パーセント 医療機関 0回75パーセント、1回17パーセント、2から3回6パーセント、覚えていない2パーセント 交通機関 0回73パーセント、1回15パーセント、2から3回11パーセント、覚えていない2パーセント その他の業態すべて 0回71パーセント、1回5パーセント、2から3回9パーセント、4から5回5パーセント、6回以上2パーセント、覚えていない7パーセント 33ページ目 〇補助犬を同伴して各施設を利用した際に拒否された経験 分譲マンション・公営/民営賃貸住宅ともに入居しようと思ったことがない人が圧倒的に多いが、入居しようと思った人の中では、民営賃貸住宅での拒否経験の割合が高い。 グラフ 補助犬同伴での入居で拒否された経験 分譲マンション 入居しようとして拒否された経験がある5パーセント、入居しようとして拒否された経験はない28パーセント、入居しようとしたことがない68パーセント 公営賃貸住宅 入居しようとして拒否された経験はない27パーセント、入居しようとしたことがない73パーセント 民間賃貸住宅 入居しようとして拒否された経験がある20パーセント、入居しようとして拒否された経験はない14パーセント、入居しようとしたことがない66パーセント 06補助犬同伴時の受入拒否事例について 〇回答のあった業態 受入拒否の事例として57件の回答があり、全体の約60%に相当する33件が飲食店であった。それ以外の業態の回答は概ね5件程度である。 グラフ 受け入れ拒否事例件数 小売店4件、飲食店33件、宿泊施設7件、医療機関3件、交通機関5件、賃貸住宅・分譲マンション4件、その他(植物園)1件 34ページ目 〇受入拒否の理由(業態別) 飲食店以外の業態ではサンプル数が少ないため特段突出しているものはないが、サンプルの多い飲食店では「動物が入ってくることは一律に禁止している」や「他の人に迷惑がかかる」、「受入の前例がない」といった項目が拒否の理由として多い。 グラフ 受入れ拒否の理由 小売店 他の人に迷惑がかかる1件、動物が入ってくることは一律に禁止している3件、様々な感染症のリスクがある1件、受入の前例がない1件 飲食店 他の人に迷惑がかかる18件、動物が入ってくることは一律に禁止している19件、様々な感染症のリスクがある2件、混雑している9件、受入の前例がない18件、本部に聞かないとわからない14件、補助犬を待たせる場所がない7件、保健所の指導で道津は入れない10件、施設がバリアフリーになっていない4件、その他7件 宿泊施設 他の人に迷惑がかかる3件、動物が入ってくることは一律に禁止している3件、混雑している1件、受入の前例がない3件、補助犬を待たせる場所がない2件、施設がバリアフリーになっていない2件、その他1件 医療機関 他の人に迷惑がかかる1件、動物が入ってくることは一律に禁止している1件、様々な感染症のリスクがある1件、混雑している1件、受入の前例がない1件、補助犬を待たせる場所がない1件、その他1件 交通機関 他の人に迷惑がかかる1件、動物が入ってくることは一律に禁止している1件、その他1件 賃貸住宅・分譲マンション 他の人に迷惑がかかる3件、動物が入ってくることは一律に禁止している2件、様々な感染症のリスクがある1件、受入の前例がない2件、本部に聞かないとわからない2件、施設がバリアフリーになっていない2件、その他4件 その他 他の人に迷惑がかかる1件、動物が入ってくることは一律に禁止している1件、様々な感染症のリスクがある1件、混雑している1件、受入の前例がない1件、補助犬を待たせる場所がない1件、その他1件 《受入拒否理由=その他の主な例》 ・衛生的に問題がある(飲食店) ・拒否をしてはダメだと知っているにもかかわらず、拒否しますといわれた(医療機関) ・以前の居住者に盲導犬ユーザーがいて、そのもう土建とトラブルがあった為受け入れられなかった(賃貸住宅・分譲マンション) ・店員に犬アレルギーがいる。(飲食店) ・過去に問題があった(飲食店) ・乗車できずに通過された(交通機関) ・「犬はダメ」という勘違い(宿泊施設) 34ページ目 〇受入拒否をされた際の対応(業態別) 受け入れ拒否をされた場合には、「その場で説明した」人が多い傾向で、その他には「本部へ連絡した」や「訓練事業者に相談した」、「自治体の相談窓口に相談した」が多いが、「使用者団体に相談した」人は少ない(ほとんどいない)。「何もしないで諦めて帰った」も少ない。 グラフ 受け入れ拒否の際の対応 小売店 その場で説明した4件、(その店舗等の)本部へ連絡した1件、訓練事業者に相談した1件、使用者団体に相談した1件 飲食店 その場で説明した25件、(その店舗等の)本部へ連絡した13件、訓練事業者に相談した12件、自治体の相談窓口に相談した13件、何もしないで諦めて帰った6件、その他5件 宿泊施設 その場で説明した4件、(その店舗等の)本部へ連絡した1件、訓練事業者に相談した2件、使用者団体に相談した1件、何もしないで諦めて帰った2件 医療機関 その場で説明した2件、(その店舗等の)本部へ連絡した2件、訓練事業者に相談した2件、自治体の相談窓口に相談した2件、その他1件 交通機関 その場で説明した1件、(その店舗等の)本部へ連絡した1件、訓練事業者に相談した3件、自治体の相談窓口に相談した1件、その他2件 賃貸住宅・分譲マンション その場で説明した3件、(その店舗等の)本部へ連絡した2件、訓練事業者に相談した3件、自治体の相談窓口に相談した1件、何もしないで諦めて帰った1件、その他1件 その他 その場で説明した1件、何もしないで諦めて帰った1件 《受入拒否時の対応=その他の主な例》 (受入拒否→受入に変わったもの) ・一緒に行った友人とともにお店の親会社にメール・電話・DMで連絡(飲食店) ・厚労省発行のパンフレットを渡して説明(飲食店) ・地域住民と管理会社等に盲導犬と一緒に住むメリットと課題をプレゼン(賃貸住宅・分譲マンション) (受入拒否のまま変わらなかったもの) ・国土交通省に連絡(交通機関) ・いろいろ話をして、ゲージに入れることで入店した(飲食店) ・通院の関係上、補助犬は連れて行っていない(医療機関) 36ページ目 〇受入拒否→対応後の改善状況(業態別) サンプルの多い飲食店では、2/3は改善されている。それ以外はサンプルが少ないが、改善されたのは半数程度である。 グラフ 受け入れ拒否後の改善状況 小売店 改善された2件、改善されなかった2件 飲食店 改善された22件、改善されなかった11件 宿泊施設 改善された4件、改善されなかった2件 医療機関 改善された1件、改善されなかった2件 交通機関 改善された4件、改善されなかった1件 賃貸住宅・分譲マンション 改善された1件、改善されなかった3件 〇受入拒否にあわないためにしていること 受け入れ拒否にあわないため、最も多いのが「補助犬を清潔に保つ」であり、次いで「事前に連絡・確認」である。パンフレットや説明資料を携行している人も15%いる一方で、特に何もしない(堂々とする=普通にふるまう)人も5%いる。 グラフ 受け入れ拒否にあわないためにしていること 補助犬を清潔に保つ32パーセント、事前に連絡・確認30パーセント、パンフレットや説明資料を携行15パーセント、お店を選ぶ(拒否されそうなところは避ける)5パーセント、丁寧に説明する5パーセント、堂々とする5パーセント、その他8パーセント 37ページ目 ○受入拒否にあったときに解決するために活用しているツール 受け入れ拒否にあった際、ユーザーは厚労省や自治体・事業者等が発行している「リーフレット等の広報ツール」を活用している人がほとんどである。 受け入れ拒否にあった際、あったらいいなと思うツールとしては「専用の連絡窓口(ユーザーが連絡し、施設に連絡してくれる窓口)」や「補助犬使用者とわかるヘルプマーク(のようなもの)」を望んでいる人が多い。また、今は補助犬シールが貼ってあるお店もあるが、逆に受け入れ拒否シールを貼ってくれると、そもそも入店することもないためありがたいという声もあった(これは、入店拒否ステッカーを貼ることが不名誉になるような社会を目指す意図も含まれている)。 グラフ 受け入れ拒否解決のために活用しているツール リーフレット等の広報ツール79パーセント、補助犬BOOK11パーセント、行政の指導7パーセント、その他4パーセント グラフ 受け入れ拒否解決のためにあったらいいなと思うツール 専用の連絡窓口38パーセント、補助犬使用者とわかるヘルプマーク29パーセント、入店拒否意思表示シール14パーセント、その他19パーセント 38ページ目 1-3.訓練事業者の使用希望への対応等にかかるヒアリング調査の結果 (1) 調査対象 盲導犬訓練事業者2団体、聴導犬訓練事業者2団体、介助犬訓練事業者2団体、介助犬・聴導犬訓練事業者1団体の合計7団体を対象とした。 【希望者へのアプローチの状況】 実態03 普及活動は、障害者イベントなどの「障害者が自立生活に必要な補装具等を考えるタイミング」にアプローチ ・リハビリ段階は、自分の障害に向き合う初期段階であるため、「補助犬使用」を考える段階にない方がほとんど。しかし、後に自立生活を考える際に思い出していただく「種まき」の効果はある。 ・「福祉機器展」「サイトワールド」等の障害者イベントは、自立生活に当たって必要な機器等の情報を求めて来場する障害当事者もおり、「補助犬使用」を考える機会としてはちょうどよい。継続して出展している中で効果が出てきている。 ・小規模事業者は広報活動が難しい。SNS、新聞などの媒体を通じてPRしている。 ・SNSのDMを活用した問い合わせの割合が増加傾向にある。 ・聴覚障害者は、障害者団体に所属していない人も多く、アプローチが難しい。 実態04 普及には補助犬使用者が大きな役割を果たしている ・「補助犬使用について知る」きっかけを作っているのは、補助犬使用者。現在の補助犬使用者が継続して補助犬を使用できる環境を作っていくことも重要。 実態05 自治体や支援団体への問合せがあった際、平等に訓練事業者につなげるシステムが望まれている ・自治体や支援団体に対する「補助犬使用」についての問合せは、訓練事業者につなげてもらわなければ始まらない。 ・問合せ後、事業者の地域・育成ポリシー・対応実態等を踏まえて自身で訓練事業者の選択ができるよう、事業者リストを提供できるシステムとしてほしい。(一方、地理的に遠い事業者に繋がれてしまうのはよくないのではないかとの意見を持つ事業者もあった) 【普及にかかる課題】 実態06 コロナ禍を除いては、希望者、育成頭数等の変化はあまりないが、実働頭数が減少している実態を踏まえ、補助犬の将来に対する危機感を持っている ■訓練事業者側の課題 ・ヒアリングした訓練事業者の中では、事業者への希望者の数や育成ペースには大きな変化がなく、ベストなペースを保って育成しているとの回答が多かった。 ・希望者は多くいるが、「補助犬使用のイメージが違った」「住環境を整えることができなかった」「家族の支援が得られなかった」「マッチングする候補犬がいなかった」など、様々な理由で断念する場合もあり、使用希望者が今より多くなれば使用者が増えるということでもない。 39ページ目 ・補助犬の育成頭数を増やすためにカギとなる要素は、補助犬希望者・人材(訓練士・ボランティア)・候補犬・施設・社会の理解や補助犬の受け入れ・・・と様々あり、常に何らかの足りない資源に向き合いながら少しずつ事業拡大を目指すという難しいマネジメントに取り組んでいる。 ・補助犬を継続的に育成していくにあたっては、人材(訓練士等)の不足もひとつの課題。専門性を求められる一方、魅力ある収入を得られない、訓練士育成の必要性などが要因。(一方で、「使用者にも、犬にも責任を持つ」ということが訓練士のモチベーションとなっていて離職率が低い、と回答した事業者もあった) ・新規の補助犬ユーザーを出していくことの重要性は認識しているが、新規ユーザーが増えればその後のフォローや代替犬の育成のことも考えなければならない。現状での既存ユーザーへの対応に必要なリソースを考えると、新規に注力する余裕があまりない。 ・大小の事業者が抱える課題は様々。事業者間での情報交換や話し合いも必要。 ・訓練事業者の所在地と事業規模に偏りがあるため、介助犬の地域分布にも偏りがある。 ・介助犬・聴導犬を認定する「指定法人」の所在地に地域的な偏りがあるため、認定試験等で長距離遠征が必須になる地方では大きなハードルになっている。 ・時代とともに社会全体の「やりがい」や「働き方」に対する捉え方が大きく変わったこともあり、スタッフの奉仕精神に頼った運営はできなくなってきた。1頭の犬や1人のユーザーに対して必要な経営資源が増え、その結果として以前と比較して効率的な運営が難しくなり、補助犬実働数の減少につながったのでは(時代の流れとして致し方ないこと)。 ■(訓練事業者から見た)希望者側の課題 ・障害者等級3・4級の方は、身体的にも補助犬を使用しやすく、社会参加の可能性が大きい。こういった方へも門戸を広げれば、希望者が増えるのではないか。(聴覚障害の場合、先天性の方は音がない生活に慣れており、中途障害の方のほうが聴導犬に対するニーズが高い傾向にある) ・全ての訓練事業者が参加できる「補助犬フェア」のような普及イベントの機会があれば、希望者が「選択」できるのではないか。 ・自治体が「補助犬使用」へのつながりを生む窓口として機能してほしい。(現状を十分に確認せずに「〇年待つかもしれないので希望はやめておいたら?」と対応してしまっている自治体の例もあるとのこと) ・日本では、補助犬ユーザーに求められる「社会参加」のハードルが高いのではないか。(海外ではもう少し緩く考えられている) ・補助犬と暮らす選択をする人が多くならないのは、社会の寛容さがなくなり、補助犬と暮らしにくくなっているからではないか。補助犬と暮らすためにはユーザーとしての素質が求められるが、現状では、してはいけないことを求められ過ぎており、適切な判断が常に瞬時にできる素質をもった人=ユーザーに適した人たちの割合はそんなに多くないのでは。 40ページ目 2. 災害時の身体障害者補助犬使用者への配慮事項についての調査等の結果 2-1.避難や避難訓練参加への経験のある補助犬使用者のヒアリング調査の結果 (1) 能登地震における補助犬ユーザーの避難の実態 ヒアリング対象:盲導犬ユーザー、能登町健康福祉課 【盲導犬ユーザーについて】 ・能登町沿岸部(小木港、海から70mくらい)にお住まいの盲導犬ユーザー74歳。全盲。 ・31歳から盲導犬ユーザーとなり、現在5頭目。仕事仲間の補助犬ユーザーに勧められて使用することに。 ・妻は極度の弱視。妻と二人暮らし。 ・歩行訓練はしておらず、白杖は使ったことがない。盲導犬が初めての単独歩行。 【地震時、避難所での状況】 ・地震の当日は息子が子どもを連れて帰郷していたため、揺れが収まったところで外に出て、避難所に行くこととした。 ・避難所までは車で行けるかどうかわからなかったため、階段を上っていった。(自宅裏の高台の小学校が避難所)最も近い階段は崩れていたため、少し遠回りをした。 ・妻は足が悪いため、健常者であれば10分程度で行けるところ、小一時間かかった。 ・自分のものは避難所で調達できるかもしれないが、犬の道具はないと思ったため、3〜4回分の餌、ブラッシングの道具が入っているカバンを持っていった。 ・地域の方々は自分が視覚障害者であることをわかっていた(普段盲導犬と歩いているので)、また妻の足が悪いこともわかっていた。そのため、出口付近に場所を作ってくれ、足の悪い妻には段ボールのベッドを用意してくれた。犬用にも畳とタオルを準備してくれた。 ・水が出るまでは、トイレはペットボトルで流すという状況であったが、見えないためにどこに流してよいかわからず水浸しにしてしまうことを懸念し、流してくれないかとスタッフにお願いしたら、気持ちよく引き受けてくれた。 ・食事を運んでくれるなどのサポートもあって、12日間、苦も無く避難生活ができた。 ・石川県視覚障害者協会から安否確認があった。(電波が来なかったことから、地震直後は携帯電話が使えなかったが、たまたま自宅に戻っていた際に、家の電話に安否確認の電話が入った) ・犬の排泄は、ワンツーベルトをさせていて、地震前と同じタイミングで餌やりや排せつができていて問題なかった。しかし、周囲の状況がわからないために盲導犬を連れて歩くことができないため運動させられず、水が出ないためにシャンプーができないなどがあって、周囲に迷惑をかけることを心配して金沢への1.5次避難を考えた。 ・金沢への1.5次避難の話題があり、「行きたい」ことを伝えたが、「いついく」という回答が待ってもなかった。(1.5次避難場所は旅館やホテルであったため、盲導犬の受入が拒否されたのではないかと考えている) ・小松にいる盲導犬ユーザーの仲間から自分の事務所を使わないかとの誘いをいただいて、そこに移った。犬のシャンプーもでき、自分たちも気兼ねなく風呂に入ることができた。 ・しかし、避難所はとても良くしていただいたので、離れがたかった。 ・小松に3月末まで滞在。その後自宅に戻った。 41ページ目 ・近所との普段からの関係性、ユーザー同士のつながりなどがあったことで、「安心できる」避難ができた。 【地域の備え】 ・対象の盲導犬ユーザーが住んでいる地区は、東日本大震災以降、中学校の校長が防災教育に力を入れてきた地区。子供たちが防災に取り組むことにより、避難訓練には多くの大人も参加していた。(300人が参加したこともあった) ・子どもたちは、電子工場と協力して避難道路の階段などにペットボタル(昼の太陽エネルギーで発電・蓄電し、暗くなるとLEDが自動的に点灯する環境に優しい発光装置で、ホタルのように発光するため、「ペットボタル(R)」と呼ばれている)を設置し、夜でも避難できるようにした。また、「海抜〇m」という看板も子供たちが設置したなど、防災に関して関心が高い地域である。 ・海沿いの地区の子供たちには東北の地震はインパクトがあったため、日ごろから防災に対する意識があった。東日本大震災の翌年に、漁業間同士の協定等があって、岩手県大槌町に船外機2艘持って行った。余っている船が2艘あったので、子どもたちの提案で、痛んでいるところにペンキを子供たちが塗って、それを積んでいった。子供たちが考えたことは、大人も何とか動かなければという気になる。 ・日中、地区にいる「中学生」は地域の力になるべきとの校長の考えのもと、防災に対する取組が浸透していた。3つの言葉「とにかく逃げる(率先して避難する)」「想定にとらわれない(過去ここは大丈夫だったなど)」「最善をつくせ!(声掛けや支援をしろ)」を寸劇など文化祭で披露していた。 ・普段から少しずつ「防災」「訓練」に取り組んで意識が醸成されていった。ベースが形成されていた。子供が自発的に取り組むと、大人も自然に取り組むこととなる。そして実際に避難となったときには、皆が自然と「自分ができることは何か」となり、自然と役割分担もできていった。 42ページ目 (2) 地域の避難訓練への参加による効果 ヒアリング対象:盲導犬ユーザー 【盲導犬ユーザーについて】 ・島根県松江市にお住まいの盲導犬ユーザー77歳。全盲。 ・2015年から盲導犬を使用している。現在2頭目。 ・妻は足が悪く、電動車いすを使用している。 【防災訓練への参加のきっかけ】 ・2016年、島根原子力発電所の広域退避訓練に参加を申し込んだ。当初は人集めに苦労していたようで喜ばれたが、予定日の2日前に「盲導犬の世話ができないので参加を取りやめてほしい」と言われたが、世話はユーザーがすることなどを説明し、参加となった。その訓練で盲導犬が静かに仕事をしていることが参加者たちに驚かれ、行政担当などにもわかっていただける機会となった。 ・また、小中学校の登校の安全を盲導犬とともに見守る活動をしていたため、その縁で公民館での避難所設営の机上訓練に誘われた。「盲導犬は廊下で待たせて」と言われたが、頼んで入室させてもらい、ここでも2時間の訓練中じっとしていた盲導犬についてみてもらうことができ、市の担当にも実感してもらえた。 ・2018年にはJALによる機内脱出体験、2019年には鉄建建設による鉄道ホーム安全対策体験が日本盲導犬協会ユーザーの会のもと参集した世話人を介して参加した。 ・2021年10月、浜田市での島根県総合防災訓練に参加。県の総合防災訓練への初めての参加となった。訓練用の避難所がつくられ、段ボールベッドのあるファミリールームに訓練避難をした。これは同年6月に厚労省の「避難所等で生活する障害児者への配慮事項等について」の中に障害者への配慮、また補助犬の同伴拒否をしてはならないことは法律で定められているとの記載を受け、松江市に避難所での補助犬同伴の受入義務の周知を求めたことがきっかけと考えられる。 【防災訓練への参加の効果】 ・2022年には県総合防災訓練は隠岐の島町が会場であったが、日本盲導犬協会は不参加としたため、個人の参加は見合わせてほしいと言われたが、前年の訓練での盲導犬の様子を見ていた行政担当の仲立ちで参加することとなった。県の担当からは検討事項が求められ、視覚障害者からの改善点などを伝えることができた。 ・島根県は、訓練後、島根ライトハウスや日本盲導犬協会からの助言等に基づき、避難所となる施設の入口に、啓発ステッカーを貼付し、施設利用者に理解を求めると同時に、災害時の協力をお願いすることとした(市町村を通じて、県内の指定避難所1,297か所(令和4年2月1日現在)へ配布(入口等への貼付依頼))。 ・以降、2023年、2024年と島根県総合防災訓練に参加。障害者自身が普段から避難経路を歩いて確認しておくこと、「どう避難させてもらえるのか?」という受け身でいれば大きな障壁となること、災害時は障害者自身を含めてどのように助け合えるのかを考えることとなり、こうした自助・共助の視点から、ITの併用を含め、当事者の知恵を集めて障害者が安心して入所できる避難所について県への提言を行った。 ・また、避難訓練に盲導犬の同伴を実際に行政担当や周囲の方々に見ていただくことで、盲導犬の同伴が普通のこととして認識・記憶してもらえた。また、排泄(仕事中に盲導犬が背負っている「ハーネスバッグ」の中に排泄用の資材などが入っていること、補助犬(盲導犬)を示す「認定証」もあり、認定証は飛行機・列車やバス、タクシーなど公共の乗り物を使うとき、旅館やホテル、食堂やレストランに入るときなどいつでも見せられるようにしてあることなど。特に、避難個室内でも、ワンツーベルトの使用により、周囲を汚さずに排泄物を処理できることなど)を説明できたことは効果が大きい。 43ページ目 ・避難路の確認やコミュニケーションのためにはITの活用は不可欠。こうした準備も重要である。健常者とのコミュニケーションだけでなく、違う障害のある当事者間でも災害時には意思疎通においてパニックになることも想定される。ITの活用を含めて、障害者の避難訓練への参加をどう促すかが課題である。 45ページ目 オ.分析・考察 1.幅広い世代に補助犬の使用について知ってもらうための調査等の結果 1-1.幅広い世代に補助犬の使用について知ってもらうための課題分析 ・障害者が自分の暮らしを考えるにあたって、「補助犬の使用」を希望することを考える際には、自立生活を支援する関係者がその相談先として挙げられるが、実際には、補助犬についての相談先や情報源は、補助犬使用者や補助犬訓練事業者が主となっている。 ・エで整理した下図にあげる関係者を対象とした実態調査から整理された使用希望にかかる現状を踏まえ、次頁に課題構造と関係各者が担うべき役割を検討した。 補助犬使用を希望する際に関わると考えられる主な関係者 補助犬の使用を希望している人(→補助犬を知るきっかけはユーザーを通した情報が圧倒的、補助犬について詳しく知ったのは、訓練事業者からが最も多い) 補助犬使用者 補助犬訓練事業者 障害に係る専門職 自治体福祉担当 46ページ目 補助犬使用の普及にかかる課題の構造的整理と各者が担うべき役割 以下、図で示している。 補助犬使用希望者 課題 ・補助犬使用者やメディアで知って希望している ・断念するのは面倒を見るのが大変、補助犬の機能に対するご認識など 補助犬使用者 課題 ・当事者として普及稀有発活動に参加している。 ・SNS等で補助犬使用の有用性を発信している。 担うべき役割 効率的・効果的な「補助犬使用の有用性」にかかる情報の発信 障害に係る専門職 課題 ・障害者の自立生活を支援する立場であるが、補助犬使用については相談等に乗れていない ・補助犬使用についての知識が不足しており、学ぶ場も少ない 担うべき役割 補助犬使用について相談・助言をするための知識の習得 自治体福祉担当者 課題 ・補助犬使用の相談窓口であるが、介助犬・聴導犬に関しては未だ不十分。 ・希望者を訓練事業者に平等かつ効率的につなげるシステムが必要。 担うべき役割 補助犬使用について相談を効率的に図っていくためのシステム構築が必要(支援者・障害者団体、訓練事業者等との連携) 補助犬訓練事業者 課題 ・希望者へのアプローチを行っているが、質を担保した育成を実施のために育成頭数が限られる。 ・育成頭数には使用者へのフォロー、代替の育成等を合わせると、新規を育成する頭数は限られる。 ・つまり、育成体制(人材の確保)が喫緊の課題であるが、魅力ある報酬や職場構築が必要である。 ・事業者間の課題共有も必要。 担うべき役割 ・人材の確保による補助犬の育成体制の構築 ・多面的な課題への取組ための事業者間の情報共有 ・補助犬使用について相談を効率的に図っていくためのシステム構築が必要(自治体、支援者・障害者団体等との連携) 支援者・障害者団体 課題 ・希望者に補助犬使用について適正な情報を提供することが必要。 ・自治体と連携して、希望者を訓練事業者につなぐことが必要。 担うべき役割 補助犬使用について相談を効率的に図っていくためのシステム構築が必要(自治体・訓練事業者等との連携) 補助犬使用希望者が補助犬に抱いている課題:補助犬使用についての正しい知識を得る機会が少ない 補助犬使用者が補助犬使用希望者に抱いている現状:補助犬使用についてのスピーカーとなっている 障害に係る専門職が補助犬使用希望者に抱いている課題:補助犬使用についての相談に乗れていない 障害に係る専門職が補助犬に抱いている課題:補助犬使用についての知識がない 障害に係る専門職、自治体福祉が補助犬訓練事業者に抱いている課題:使用希望者と「効率的・効果的な繋ぎ」ができていない 補助犬訓練事業者が補助犬使用希望者に抱いている課題:補助犬使用を考えるための機会の提供がシステム化されていない 47ページ目 1-2.補助犬使用希望者に向けたツールに掲載すべき内容の検討 ・実態調査結果や、前頁の課題構造から、補助犬希望者に向けたツールについては、以下の内容の掲載を考える。 ・令和元年度に作成した周知チラシを基本案とする。 01身体障害者補助犬について ・どのような目的で位置付けられているか ・ひとりでも多くの障害のある人が自立と社会参加をする意欲が持てるよう、補助犬について学び知ってみませんか? ・補助犬の使用については、「身体障害者補助犬法」で使用する身体障害者に対する義務等や同伴することができるための措置等について定められています。 ・どんなサポートをするのか ・補助犬は3種類 ・盲導犬は、視覚障害者の安全な歩行をサポート(もう少し具体的に) ・聴導犬は、聴覚障害者に代わって音を聞き、知らせる(もう少し具体的に) ・介助犬は、肢体不自由者の日常生活動作をサポート(もう少し具体的に) 02補助犬との暮らしについて ・補助犬使用にあたっての心構え ・補助犬使用者の義務(衛生管理、排泄管理、行動管理) ※援助を依頼してもかまわないことを明記。 ・補助犬との暮らしの効果 ・補助犬使用者の声(今年度アンケート、その他これまでのヒアリング結果などから整理する) 03補助犬使用に向けて ・希望してから認定を受けるまでの流れ ・認定フロー ・訓練や飼育にかかる費用 ・費用の目安(費用感に変わりがないか確認が必要) ・訓練事業者の紹介 ・全訓練事業者の紹介 →希望者が選択の参考となるよう、各事業者にアピールポイントを書いていただく ・受入れ拒否などへの対応について(事業者、職場等) ・対応の事例を紹介(どのように解決したか) 50ページ目 2.災害時の身体障害者補助券使用者への配慮事項についての調査の結果 ■避難時の実態(能登半島地震のケース) 実際に避難所への避難を経験した盲導犬ユーザー、自治体福祉担当へのヒアリングを実施したが、避難時におけるポイントとして以下が挙げられた。 ・日頃からの近所づきあいの中で、「視覚障害者」であることを認識されていたことで、周囲の人からの声掛けや理解があった。 ・避難時においては、できないことを明確に運営側に伝えたことで対応を得ることができた。(トイレの水が出ない状況でペットボトルで排泄物がうまく流せないことを運営者側に伝え、協力を得られた) ・普段からの避難訓練の重要性を地区の皆さんが理解していた。(子どもたちが率先して避難訓練や防災対応をしていた) ■避難訓練の実態(島根在住盲導犬ユーザーのケース) 積極的に避難訓練に参加していた盲導犬ユーザーへのヒアリングから、以下がポイントとして挙げられた。 ・盲導犬を同伴した避難訓練への参加を運営側に伝えることによって配慮点を理解された。 ・盲導犬ユーザー自身も、積極的に避難訓練に参加することで、「どう避難させてもらえるか?」と受け身ではいけないと感じ、自助・共助の視点から、ITの活用も含め、避難所について県への提言を行うに至った。 ■補助犬ユーザーの実態 検討会委員であった補助犬ユーザーへのアンケート・ヒアリングを実施したが、以下のような課題が挙げられた。 ・地域では、要支援者としての認識はされているが、補助犬ユーザーであることは認識されていない場合が多いのではないか。 ・避難訓練に参加できていない状況が周囲でも見られ、実際に補助犬を同伴してどんな避難ができるのかがわからない。 ・ペット同伴可の避難所であればよいが、補助犬同伴についての理解が浸透していなければ、理解がされないのではないか。災害時は皆心の余裕がない状況で本当に理解がされるのか。 51ページ目 カ.有識者会議の実施状況 ■「身体障害者補助犬の効果的な普及・啓発に関する検討会」の設置 本事業では、以下を設置趣旨として検討会を設置した。 【検討会の設置趣旨】 社会システム(株)では、厚生労働省の令和6年度障害者総合福祉推進事業の採択を受け、「身体障害者補助犬法の効果的な普及・啓発に関する調査研究」を進めている。 身体障害者補助犬(以下、補助犬とする)の実働頭数は、近年減少傾向にあり、補助犬ユーザーの高齢化が一因であるという指摘がある一方で、普及を図っていくためには、幅広い世代に補助犬の有用性を知っていただく必要がある。 一方で、施設等における補助犬の同伴の受入が義務付けられているものの、同伴拒否の事例が後を絶たない状況にあり、社会の受入についても働きかけを引き続き行っていく必要がある。 こうした背景を受けて、本調査研究事業では、 (1)幅広い世代に補助犬の使用について知ってもらうための実態調査の実施及び周知ツールの作成 (2)災害時の補助犬使用者への配慮事項についての実態調査及び周知ツールの作成 (3)補助犬の使用にかかる啓発ツールのリバイス を行っていくことを目的としている。 そこで、特に上記の(1)(2)の目的を検討するため、身体障害当事者、補助犬使用者、学識経験者等に、事業検討へのご助言やご意見をいただくため、検討会を設置するものである。 ■検討会委員 検討会委員として、以下の8名を招聘して検討会を実施した。 有識者(座長) 中野 泰志 慶應義塾大学経済学部 教授 支援団体 橋爪 智子 特定非営利活動法人 日本補助犬情報センター 専務理事兼事務局長 障害当事者団体 橋井 正喜 社会福祉法人 日本視覚障害者団体連合 副会長 大竹 浩司 一般財団法人 全日本ろうあ連盟 理事 竹田 保 公益社団法人 全国脊髄損傷者連合会 理事 補助犬ユーザー 山本 誠 全日本盲導犬使用者の会 会長 木村 佳友 日本介助犬使用者の会 会長 松本 江理 日本聴導犬パートナーの会 副代表 52ページ目 ■検討会の実施状況 検討会は、以下の3回を開催した。 第1回 令和6年9月19日(木) 10:00〜12:00 TKPガーデンシティ渋谷カンファレンスルームC ・本調査研究の趣旨と進め方について ・アンケート・ヒアリングについて 第2回 令和6年12月26日(木) 15:00〜17:00 TKP新橋カンファレンスセンターカンファレンスルーム13B ・幅広い世代に補助犬の使用について知っていただくための検討について ・災害時における補助犬使用者の受入の配慮点周知ツールの作成について 第3回 令和7年3月4日(火) 15:00〜17:00 TKPガーデンシティ渋谷カンファレンスルーム4E ・周知用リーフレットについて ・災害時の配慮にかかるリーフレットについて ・今年度のとりまとめについて ■第1回検討会議事録 (1)本調査研究の主旨と進め方について 木村委員 色々なところで「補助犬」としてひとつに括られているが、盲導犬、聴導犬、介助犬は使用者の障害が違う。特に介助犬使用者にとっては、介助犬の世話が負担である。そのため、世話ができるかどうかで介助犬の使用をあきらめている人が多い。盲導犬・聴導犬の場合は、犬の世話ができることが使用者の条件となっているが、介助犬の場合、本人が全ての世話をできない場合には、周りのサポートが可能となっている。そのことを知らない人もいるので、分けて考えてリーフレットを作成していただきたい。 松本委員 障害当事者の方が補助犬の有用性を知るきっかけなどについてアンケートによって色々見えてくると思うが、私自身色々なところに関わっていて、障害の専門職の関わりは、補助犬の普及啓発には大きな意味があると思っている。 例えば中途で障害を負って自助生活に困難を抱えた時に相談に行く相手が、どこまで補助犬という選択肢を提示しているのか。日常生活を補助する色々な自助具の中で、補助犬という選択肢もあるということを専門職の方がどこまで把握して提示しているのかがとても気になる。 現状は、今たまたま知り合いに補助犬ユーザーがいたとか、たまたまイベントで知ったということがきっかけで動く方が多い。「たまたま」ではなく、本当に障害当事者が困った時に相談する相手が、補助犬という一つの選択肢を提示できるようにするべきではないかといつも考えている。 アンケートをする際には、当事者と訓練事業者だけではなく、障害に関わる専門職へのアプローチもしていくことが大事ではないか。 中野座長 昨年度の会議で専門職の関わりに関する検討を行ってきた。その中で専門職がどれだけ選択肢として補助犬を理解しているのかということについては、大きな課題があるということが明らかになった。昨年度の成果は成果でまとめているが、有用性を周知するチラシが当事者だけではなく、専門職にも、昨年度の成果も踏まえて提供できることが重要。 53ページ目 大竹委員 「補助犬の普及」について、歴史は浅いとは思うが、成人の障害者に対しては色々なチラシを作る、啓発をするなどしていると思うが、一方で、子供たち、聾学校や特別支援学校などでの体験をさせて、こういうツールがあるという勉強をする機会があれば、社会に出た際に初めて知るのではなく、教育の中で実際に体験し、将来補助犬が使えることを知っていることで使用が広がるのではないか。 中野座長 盲導犬に関しては、視覚障害特別支援学校で体験会等が行われているが、聴導犬に関して聴覚障害特別支援学校で、そうした取り組みがあるのか私は知らないが、どなたかご存じか。 松本委員 私は都内在住であるが、都立中央ろう学校に3年に一度訪問し、3学年全部にお話をさせていただいており、成人聴覚障害者から聴導犬のケアや生活についての話を聞ける機会となっている。 ただ、一校からしか声はかかっていない。もっと色々なところに行って若い世代に「こんな選択肢もあるよ」ということを伝えたいが、声がかかってないという状況。 橋爪委員 個別にたまたま声をかけていただいて聾学校に授業に行ったという話は聞くが、それがずっと続いている、全国に展開しているということは聞いていない。ぜひ色々な機会が増えていくと素晴らしいと思う。 中野座長 特別支援教育への介入というのはとても重要だと思う。今回作成するチラシも、可能な限り、予算の関係はあると思うが、特別支援学校にも情報提供をしていただきたい。 これは先ほどの専門職とも関わるが、視覚障害の場合には、盲導犬の訓練センターの指導員が、盲導犬とともに盲学校に訪問して歩行指導を実施している。その中で通常の歩行指導を受けながら、盲導犬という選択肢を知ることができるようになっている。同じようなことが聴覚や肢体不自由の特別支援学校でも実施されていき、そこに補助犬ユーザーの当事者に参加していただけるような体制ができるととても良いと思う。ぜひ特別支援教育という視点も今回のチラシ等の中に反映させていただきたい。 橋井委員 補助犬法ができて20年経つにも関わらず、私ども地域の障害者サービス相談センターには毎年数件入店拒否という問題が出ている。解決するのは相談センターがしているが、行政や商業者の団体への申し入れを厳しくしていかないといけないと思っている。盲導犬とどこへでも移動することを拒否されるのはただの差別ではなく、人権問題である。そこは厳しくした方がいいと思う。 盲導犬は一番多いときには1,051頭という記憶がある。昨年は796頭であることから考えると、250頭減っている。この原因は何かということを調査しない限り盲導犬は増えないのではないか。 現在、10くらいの訓練事業者があると思うが、引退、新規の数をうまく計算できていないのではないか。これは事業者の問題だと思っている。 また、今回のアンケートは、どこを通じてどのような形で配布されたのか。私の周りではこれは聞いていない。日視連でもこのアンケートを回したという記憶がない。アンケートには、回答者が職業仕事に就いているかの設問がなかったのではないか。障害者差別解消法が改正されたが、盲導犬を使用するためには、最初1ヶ月くらいの訓練が必要であり、その後からは2週間ほどと聞いているが、仕事についている人に対しては、それに対する休暇が与えられないのか。可能なのか。だから夏休み等がある盲学校の先生の盲導犬使用が多かったのかなという理解もできる。 54ページ目 中野座長 入店拒否が減らない、これは人権侵害であるというのはとても重いご指摘だと思う。ぜひこれは事業者別のリーフレットの中に明確に書き込んでいただきたい。 アンケートが届いていないということであるので、適切な依頼先に依頼が行っているのかどうかのご説明をいただきたい。 その盲導犬の頭数が減っているという実態に関しては、これ事務局でもこれまで色々な事業者にヒアリングをしてある程度把握しているのではないか。 事務局(社会システム) 盲導犬・聴導犬・介助犬の違い、また訓練事業者によっても違うというところがあるが、確かにユーザーは減少しており、新規のユーザーがあまり増えておらず、長年のユーザーが引退しているなどのお話を聞いている。これから、訓練事業者さんへのヒアリングを何件かさせていただく予定であり、各事業者のユーザーさんの状況はどうなのかを伺う予定。 橋爪委員 補助犬の数はたしかに年々減ってきている。私も直接的にこれが原因という話は聞いてはいないが、色々な関係者の話を聞いたところ、視覚障害のユーザーは、当事者全体の高齢化が進んでおり、若い方で手を挙げる人が少ない。また、近年は色々便利なものが出てきているので困っていないと思っている人も多く、盲導犬との体験をする機会が少ないなど、色々な要素が絡み合ってなかなか盲導犬の希望に至らない。もう一つ大きいのは、毎年同伴拒否の事例があり、社会が寛容ではないという事実を皆さんがお聞きになるので、なかなか気軽に手を挙げられないというのがあると思う。 この点に関しては、介助犬も聴導犬も同じ。皆さん直接友人などから聞いて、「いいよね。いいとは思うけれども、大変そうよね」となかなか気軽に手が挙がらないということは聞いている。 また訓練事業に関しても、非常に資金がかかる訓練で、公的助成がない中でやっているため、訓練も簡単ではない、人材が育たないなど、多角的な原因で増えていないということかなと思っている。 橋井委員 今の橋爪委員の話は当然だと思うが、今一つ大きな原因として、ガイドヘルパー、同行援護の事業が全国的に広がったということが大きいのかなと思っている。特に、都心部の場合はヘルパーさんも見つけやすいので皆さんがそちらを利用している。また、若い層はアプリなど色々なものを使って、何とか1人で歩行ができているようだ。しかし、私の懸念は、地方へ行くと安全でないこと。道路を歩いていてもすぐ横がちょっと落ちていたり、音響信号機も少ないなど、地方ほど盲導犬が必要かなと思う。 そして、若いユーザーが増えないのは、金銭的な負担も理由ではないか。お風呂、ブラッシング、医療などにかなりの金銭的な負担がある。また、ブラッシングはこまめにしなければならないが、仕事をしている人たちにその時間が取れるのか。そういった難しさから一歩引いているのではないかと考えられる。 55ページ目 中野座長 盲導犬の数が増えない理由として、ニーズの問題と供給の問題の両方が大切だということ、また、都会では、同行援護や色々なアプリを使った移動が可能であるが、地方では実はすごく必要性があるので、地方での盲導犬ユーザーのニーズはあるはずで、そこを目指していくことが重要ではないかというご指摘をいただいた。 また、若い人に普及しない問題として今の若い人たちにとってはコスパ、タイパが重要となっている。金銭的に余裕のない中でケアのための負担がハードルになっているのではないかということや、ケアに時間がかかるということに対してメリットと天秤にかけたときに選択されていないのではないかという話だった。まさにユーザーであるからこそ出てくるご指摘であり、今後の議論を進める上での参考にさせていただければと思う。 山本委員 私個人としては、日本盲導犬協会のユーザーでもあるので、ユーザーの中で色々啓発や盲導犬の減少の実態について考えている。私達当事者団体の中でも分岐した会があり、その会でもリーフレット、パンフレットなどを作成している。それらをまず収集分析して、何を訴えていくのか、何を啓発していくのかを整理していくのもよいのでは。 また、社会に広げていく上で一番重要なのは子供の教育だと思う。小学生の時代から、盲導犬、介助犬、聴導犬を身近に感じ、そこから有用性を子供たちが見出していくことが、一番大切だと思う。 私自身は盲導犬を持って16年足らずであるが、身近に盲導犬がおらず、社会人になってから盲導犬を見かけて自分の必要性を感じて使用者となったので、そうしたプロセスの中で「持とう」という心構えがなかなか持てなかったが、子供の頃から身近に感じ、「選択肢があるよ」ということを教えていくことが一番いいのかなと思う。 盲導犬使用者の数が減ってきているのと同時に、全日本盲導犬使用者の会も当時は300人、400人と会員がいたが、現在は280人ぐらいと減ってきている。それはやはり、代替は、使用者の高齢化が進み、盲導犬を持つまでもないと断念する思いが引き金となって、持たなくなり、減少してしまう。新規の方が持たないのは、先ほどからも出ているが、やはり社会の中で必要性を感じなくなってきている障害者が多くなっている。 スマホや、バリアフリーの整備などで、あちこちで安全性が確保されてきている。そうした技術、社会の整備が進んでいく反面、自分で歩行することに問題ないなという風に感じてきてしまっている実態がある。色々なIT技術が進歩していく中で「持たなくても全然やっていけるね」という安心感が逆に必要性を欠いてしまっているのではないかなと思う。そして、盲導犬を持つといいよと言いながらも、社会において、受入れ拒否はこれだけ大変だよ、ということも訴えていく必要がある。これらの情報がそういったイメージを与えていってしまうところが減少という現状を生み出しているのかなと思う。 こうしたことを鑑み、今後の啓発にあたっては、うまくバランスをとってやっていかなければ、なかなか普及していかないのではないかと感じている。 56ページ目 中野座長 当事者団体で作っているパンフレットもぜひ参考にしてほしいというご意見は重要であり、事務局は収集して作成にあたって参考にすべき。また、「こういうパンフレットがこういう団体から出されていますよ」という情報もどんな団体があるかも含めて広げていくべき。 社会に広げる中で子供たちへの教育が重要というご意見はまさにその通りで、ぜひそういった活動についても展開をしていっていただきたい。私どもの大学でも松本委員に来ていただいて、大学生300人ぐらいの前で聴導犬、盲導犬、介助犬についての説明や聴導犬のデモンストレーションといった啓発活動を展開している。こういった取り組みが全国で、しかも小学校から大学まで、様々なところで行われるのがすごく重要である。今回アウトプットの中では使えないかもしれないが、グッドプラクティスの一つとして、そういった取り組みを紹介していただけると良いと思う。 盲導犬が減少している状況については、事前的改善措置が講じられた結果、必要性を感じなくなっている当事者がいるということもあると思うが、必要としているユーザーがいるということもまた大切な事実である。これは社会インフラが整うと同時に、補助犬という選択をされた方がちゃんと人権が守られるような、そして選択肢の一つとなるような仕組みづくりを、ぜひともパンフレット等では進めていただければと思う。 木村委員 盲導犬の減少傾向ほどではないが、介助犬も減少している。介助犬使用者の場合、介助犬の引退後に次の介助犬を持つ割合が35%くらいで、盲導犬使用者の60%くらいに対してかなり低い。それも介助犬が増えない原因である。 介助犬を持つときに十分な説明がされておらず、自分の思っていたニーズと実際の介助犬の介助がかなり違っていて次の介助犬を待つのを諦める人も多いと思う。介助犬を希望する障害者にきちんとデメリットもきちんと伝わった上で、介助犬を選択できるような情報があるといいと思う。 介助犬を持とうと思うときに、最初に話をするのは育成団体にはなるが、補助犬貸与事業は都道府県が行っているので、地方自治体に連絡を取ることになる。盲導犬は各県に1頭以上いるが、介助犬がいるのは25県であるため、担当者が介助犬について詳しくない場合もある。事業は県であるが、受付は市町村である。そうすると聴導犬・介助犬だけでなく盲導犬がいない場合もたくさんある。また、自治体の担当者は、定期異動によって代わってしまうため、補助犬に対する知識があまりなく、障害者が問合せても、十分な情報提供してもらえない場合がある。松本委員が言った「専門職」には地方自治体の担当者も入ると思うが、そういう地方自治体の職員へのアプローチについても考えていただきたい。 竹田委員 私たちの団体は、重度の身体障害の団体であるが、補助犬を自分ではケアができない場合があり、ケアを家族なり介助者なりに頼まなければならないということが出てくるかと思うが、そこが補助犬使用にあたってのハードルとなっている。この問題を解決していかなければ、補助犬使用につながっていかないのではないか。厚労省としては、どんなお考えかをお聞きしたい。 厚労省 直接的な回答はいま用意できないが、自分でケアができないことがユーザーになることの一つのハードルであるならば、確かに何かしら事業なりサービスなりで対応できればよいと思うが、大きな話であるため、今の時点で明確な答えはできないが、ご意見としては賜りたい。 竹田委員 重度の障害者は、家族やヘルパーが関わることが多いから、ケアの内容として補助犬の世話が入ることもご理解いただけなければならないため、ハードルが高いと思う。 57ページ目 中野座長 とても重要な意見。制度上の整理や、実際にはこの制度を運用していく必要性があるかと思う。そのための色々な情報提供をこの会議の中でも進めていければと思う。 松本委員 盲導犬・介助犬の補助犬の数が減っている要因、問題点の話があったが、聴導犬も確実に減っている。その中で同じような原因はもちろんあるが、聴導犬の特徴として、盲導犬・介助犬に比べて、障害当事者がそれを必要とする意義が伝わりにくい、理解しづらいという面がある。 盲導犬の場合は、例えば外出時に歩行をサポートする、いたら助かるということがわかりやすい。介助犬の場合も、例えば日常生活の中で落としたものを拾ってくれる、いろいろなサポートとして実際にとってくれる、やってくれるっていうのがわかりやすい。それで「これはいいな」と思う人も出てくると思う。 ただ、聴導犬の場合、確かに音を伝えてくれるということがあるが、実際それがなくても、自分で外出もできるし、家の中で留守番もできないことはない。できるかできないかと言ったら、聴導犬がいなくても、日常生活を送ることはできる。では、なぜ聴導犬が必要なのかといったら、いることによって、より安心・安全に外出ができるし、日常生活を送れる。それぞれの音は、いつ起こるかわからない。だからそれを伝えてくれるということ、どんな状況にあっても、たとえ寝ていても、後ろを向いていても、不意に出た音も教えてくれる。たまたまデモンストレーションを観た際に「音を教えてくれたね、いいね」というのではなく、何もしないで「ぼーっ」としているときに、「聴導犬が教えてくれて気づけた」ということを障害当事者が実感する機会がない。 私自身も実際生活をしてみて、1日の中でたとえ1回しか音を教えてくれなかったとしても、その1回が居眠りをしているときや他のことをしているときに教えてくれた、という安心感が、聴導犬の存在への意義に繋がっている。しかし、実際聴導犬と生活をしていなければ、それを実感する機会がない。 だから同じ聴覚障害を持っている人たちに、聴導犬のときに、単に音を教えてくれるというだけでは、なかなか色々なハードルを越えてまで聴導犬と生活しようということを選ばなくなってしまうのは仕方ないのか。本当に日常生活の中で、聴導犬がいることでどれだけ安心・安全になり、今の生活と比べてアップするということを実感する機会を障害当事者に味わってもらいたい。そうしなければ、欲しいという声は増えていかないのではないか。 中野座長 実感するチャンスをちゃんと提供する必要があるというご指摘はとても重要。 今回この事業の範囲内には含めるのは難しいかもしれないが、そういった実感する機会というのを増やしていくような取り組みが、普及の中で特に当事者に対しては必要だということは、ぜひどこかに明記していただきたい。聴導犬だけではなく、盲導犬、介助犬もやはり実感できるということは大切であり、取り組みが必要だということをまとめていただければと思う。 大竹委員 新規ユーザーは、補助犬を利用したい場合には、自己負担があるのか。まずいくらか費用を出して、訓練が始まるということになるのか。そのあたりの制度のことをお教えいただきたい。 教えてほしいという理由は、私は大阪府の補助犬審査会に10年以上出席しているが、確かにユーザーの数が減っているというのでうかがったら、大阪府は補助犬の貸与に補助金を出している。審査をして審査に受かった場合は補助金がでるということだった。しかし、落ちた場合どうするのかを聞いたら、本人から事業者に対して直接お金を出せば補助犬がもらえるという方法もあるということだった。制度についてよくわからないので、おうかがいしたい。 58ページ目 厚労省 厚生労働省では、地域生活支援事業費補助金ということで、補助犬の育成、普及啓発に対して、各都道府県に補助金を交付している。その各都道府県に交付された補助金の中で、各都道府県が今年は何頭ということで計画を立てる。仮にその計画の頭数から申し込みがオーバーしてしまった場合は、私が聞いたところによると、各事業者で寄付金等を活用して無償で対応されているケースがあると認識している。 確かに費用については、補助が出る場合と出ない場合があるので「必ず出ます」とは言えない。 費用面については、今年度リバイス予定の「参考資料1」のチラシにも記載されている。 中野座長 参考資料のチラシには書いてあるが、それぞれの自治体等で運用の仕方が違ったり、3種類の補助犬でまた運用の仕方の違いがあるため、あまり詳しいことが具体的に書かれてはいない。しかし、わかりやすくまとめいただくように、このパンフレットのリバイスを進めていただきたい。 橋爪委員 都道府県に申請をしてもその枠がもらえない方々は毎年出てくる。その方々の多くは、訓練事業者に申し込んだ際に、その訓練事業者が個別に寄付を集め、この費用を使って訓練し、ユーザーさんに対しては無償で補助犬が貸与される。しかしこれは、何か法律で定められているわけではないため、訓練事業者によってやり方は様々で、出張費がユーザー負担となっているなど、それぞれの契約で進められるものになる。 ただし、実際に補助犬との生活が始まってからの飼育費用や獣医療等のある程度の予算はユーザーの自己負担である。これは命ある家族が増えるための飼育費用ということである。 大竹委員 訓練事業者に対する補助金があれば、事業者が安心して次の訓練ができ、ユーザーが増えるということになるわけか。寄付金に頼るという現状では、ユーザーが増えていかないのか。 中野座長 おっしゃる通りである。私は盲導犬に関わらせていただいているが、盲導犬の事業でも事業者が寄付金をかなり集めて、ユーザーの自己負担がないようにとこの事業を進めている。途中から国の補助金等や、自治体からも様々な補助が出るようになったが、今、この補助金だけで賄えているかというと必ずしもそうではないというのが現状である。事業者が様々なお金を集めて対応しているのが現状と理解いただいてよいかと思う。 しかし、それぞれ事業者や自治体によって運用の仕方に違いがあるので、細かな説明をこういった全国統一のパンフレットの中に書き込むことが難しい。そのため、希望する場合は自治体にご相談くださいというような書き方にせざるを得ないのが現状である。 ご指摘のように、ユーザーを増やしていくためには、安定的に供給できる状況を国や自治体で作っていただくことは大切である。 大竹委員 事業者に対するアンケートも行うのか。事業者が苦しんでいる状況を集めて、それを解決するための議論が出てくると思う。 59ページ目 (2)アンケート・ヒアリングについて 木村委員 資料−4の「被災経験のある補助犬ユーザーへのヒアリング」についてだが、障害者が避難をする場合、一時的には緊急避難の一次避難所に行き、その後福祉避難所に移ると思うが、自治体が補助犬使用者の受入に対する準備をしているのか、実際に対応したことがあるのかということの調査をしてほしい。自治体の情報も整理いただけるといい。 武田委員からの意見「介助犬のケアをヘルパーにしてもらう」についてだが、自治体によっては福祉用具のメンテということで訪問介護の方に犬のケアを頼めるところもあれば、できない自治体もある。「介助犬のケアをヘルパーにしてもらう」は、グレーゾーンがあるということを知っていただけるとありがたい。 橋井委員 アンケートの配布先については、先ほど事務局から訓練事業者から配布を行うということの説明があったが、改めてどこに配布をお願いしたかをリストアップしていただきたい。 盲導犬を広げようとしている中、今現在の使用者だけではなく、辞められた方になぜこういったアンケートをしないのか。 災害のヒアリングについては、どこを対象にするのか。能登半島地震の被災地だけなのか、熊本地震、2011年の東日本大震災まで対象とするのか。 また、訓練事業者のヒアリングを行うとしているが、何ヶ所行くのか。数か所やるべきである。 事務局(社会システム) ユーザーアンケートについては、現時点では、ユーザー団体さんを通じて配布している。 被災経験のあるユーザー様のヒアリングは4〜5件を考えており、該当するユーザー様自体が少ないと想定されるため、東日本大震災などある程度遡った災害も対象となる。 訓練事業者ヒアリングについては、4〜5件を考えている。辞めたユーザーの「やめた理由」については、訓練事業者ヒアリングで聞いていきたい。 橋井委員 アンケートはユーザー団体だけでは不十分で訓練事業者を通じた配布が必要。また、障害者団体でもアンケートを行うことが必要ではないか。せっかくアンケートをするのにここまで手を伸ばさなければもったいない。丁寧に調査をしてほしい。 松本委員 今回「補助犬の効果的な普及啓発」を考える場で、ヒアリングの対象として「被災経験のある補助犬のヒアリング」をなぜ組み入れたのかについては疑問がある。確かに大事なことであるが、補助犬を使用するにあたって、そのことを想像災害時のことを想像したら、ちょっとためらう人がいて、そういう人たちのフォローとして実際こうですよということを知ってもらうためにアンケートを取るというのは、わかるが、それは二次的なことではないか。 この検討の中の流れとしては、優先順位が後ではないか。そよりも、補助犬と暮らしていない人も含めた障害当事者自身が補助犬に対してどう思っているのか、どういうことを知らないのか、なぜ持たないのかなどを知ることが大事である。対象者として先ほども言ったように、当事者、ユーザー当事者、訓練している人、そして加えていただけるなら専門職、そして何よりも潜在的ユーザーの候補者である障害当事者の団体さんへ補助犬に対する印象も含めたアンケートを取る方が優先じゃないかなと私感じている。 60ページ目 橋爪委員 実は当会から被災に関する調査を今年お願いしたいということを厚労省の方には伝えてしたので、この内容が入っている。この被災の部分に関しては、自治体であったり、避難所運営をしている方々への啓発になるので、普及啓発とは違う調査としてのたてつけになっているのかと思う。 事務局(社会システム) 補足させていただく。本日は参考資料を2つ提示している。 今までご議論いただいた「補助犬使用の有効性を希望者に伝えたい」という内容については、ユーザーさんなどの声を聞きながら参考資料1をリバイスしていきたいと思っている。 あわせて、調査事業の中に別のテーマがあり、参考資料2として付けている業態別のリーフレットの追加を考えている。これは各業態に対して補助犬のユーザーさんは、こんな方がいらっしゃって、こんなことを配慮してくださるといいですという形で整理したリーフレットで、各業態の協会を通じて一昨年に配布したもの。その後、今年の能登の地震があり、自治体向け、地域向けに避難が生じた場合にどうしたらいいかという内容で、これらと同じようなものを作りたいと思っている。 別のアウトプットとなるため、分けて考えていただければと思う。説明が不十分で申し訳なかった。 大竹委員 手話通訳を例に言うと、聞こえない人が手話通訳を頼んだら通訳者がいつでもどこでもいる社会を作りたいというのが目標で、そうなると、手話通訳者を増やしたい、そのためには通訳者の養成が必要であり、教える講師が必要。さらに講師採用のための費用が必要となる。 この例で考えると、たくさんの補助犬希望にこたえ、補助犬を増やしていくには、訓練事業者側の負担が増えていくことになり、しかしお金の問題が後回しになっている。そのため、訓練事業者のヒアリング項目には、運営の面で具体的に話を聞くようにするべき。独立した運営の面等々も含めて、利用者を増やすための運営面の課題を聞くことが必要ではないか。 中野座長 事業者のヒアリングで可能であれば今の経費面の話についても聞いていただければと思う。 事務局(社会システム) 資料4−2に日本介助犬協会さんのヒアリング内容を整理しているが、当該協会さんでは、とても寄付をうまく集めている。そのための運営体制をつくっており、訓練とは分けて分担してやるので、寄付がきちっと集まっているという話であった。それが自分たちが質を担保した補助犬を出せる一つのベースだというお話をされていた。また、色々なところにキャラバンでお伺いして補助犬の有用性について「種をまいていくこと」が必要ということもうかがった。それも少しずつ広がってきていて、希望者は増えているというお話をされていた。ご指摘のように運営面というところについては、なかなかお話しいただけない部分もあるが、運営面の課題も明らかになるようヒアリングをしていきたい。 61ページ目 橋井委員 ユーザーに対するアンケートはすでに実施しているとのことなので、難しいと思うが、今回、就労に関しての質問がなかったと思う。「実際仕事を今やっているか」「休業中か」とか、「就労している人がどうやって補助犬を使っているのか」などを、今後のアンケートでは入れていただけるとよい。 中野座長 既にアンケートは発出されており、今回は修正ができないが、次回以降同様のものが行われるときには必要であるということを書いておいていただければと思う。 特にこの議題2でアンケートやヒアリングについて議論させていただいたが、時間が十分に取れなかったこと、および既にこの事業をスタートしてしまっていて今の時点ではもう既にヒアリングもアンケートも始まっているという段階で、第1回の委員会になったことは、皆様にはちょっとお詫びを申し上げます。今日のご意見も参考にさせていただきながら、ヒアリングの中で追加で聞けることがあれば、聞いていただきながらまとめていっていただければと思う。 事務局(社会システム) 冒頭の不手際、大変申し訳ございませんでした。(資料5で今後の予定を説明) 中野座長 今日は時間が十分にとれなかったところもあり、もし本日発言できなかったご意見があれば、メールで受け付けていただきたいと思いますので、ぜひともその点をお願いする。 今回実施することがたくさんあるが、会議の回数は数が少ないので、私達がどんな役割を果たせばいいのかというところ明確にしていただきたい。「アウトプットにどう関与するか」というところである。 アンケート等に関しましては、意見が色々と出たが、すでに実施しているため、ぜひとも第2回、第3回の委員会ではこの結果を紹介していただきながらも、それを最終的なアウトプットとしてまとめるときに、例えばリーフレット等の中でどう表現すればいいかということについて私達委員の意見を求めていただく方が生産的だと思う。 (3)検討会後の追加意見 木村委員 ◆補助犬シールについて 補助犬法で、補助犬同伴の受入が義務づけられているので、補助犬シ−ルの有無にかかわらず、施設に補助犬を同伴できるのですが、障害者を含め、多くの人が「補助犬シールを貼ってある施設にしか補助犬を同伴できない」と勘違いしています。 「補助犬シールは、補助犬や補助犬法を知ってもらうためのものであり、補助犬シールを貼っていない施設にも補助犬を同伴できること」を周知してもらいたい。 主に流通している補助犬シールは、添付ファイルの「厚労省シール」「シンシア(宝塚市)シール」「盲導犬シール」の3種だと思います。 厚労省シールとシンシアシールは、補助犬法の説明があり、表記が「ほじょ犬」「ようこそ!補助犬」となっています。 しかし、盲導犬シールは、補助犬法の説明がなく、「補助犬同伴可」と表記されています。 補助犬法の説明がなく、「同伴可」と表記することで、「補助犬シールが貼ってある施設にだけ、補助犬を同伴できる」という誤解を招くと思います。 62ページ目 盲導犬関係者に個別にお願いするだけでなく、過去の厚労省検討会の席上でも、文言の変更をお願いしたことがあるのですが変更されていません。 こういう小さな変更も、補助犬への正しい理解に繋がると思います。 63ページ目 ■第2回検討会議事録 (1)検討課題01(幅広い世代に補助犬の使用について知っていただくための検討)について 木村委員 希望者向けのチラシが、今は一種類となっているが、内容がかなり多く、今回の話でさらに増えると考えられるので、補助犬の3種で共通の部分と、各補助犬で異なる個別部分の2構成にして、個別部分が異なる3種類のチラシとしていただけたらと思う。 中野座長 一つで盛りだくさんの情報があるとかえって混乱する可能性があるので、ぜひ分けて作成するという方向性でお願いしたい。 木村委員 厚労省のWebサイトに、東京五輪に向けて作成した、海外の補助犬使用者向けの、日本の補助犬使用者の一般的な生活を紹介したページがある。これは英語になっているので、日本語版を作成して、今回のチラシからそこにURLとかQRコードで飛べるように紹介してみてもらうような形にしていただければよいのでは。 中野座長 これを作られたのは橋爪委員のところとのことなので、どのようなものか、橋爪委員からご説明いただいてよろしいか。 橋爪委員 今、話のあったページは、海外のユーザーさん向けに、日本に来た場合、日本のユーザーの1日の活動スケジュールみたいなものを紹介しているもの。そこにはイラストとスケジュール的なものが書いてあったと思うが、マナーを守ってほしいというのが趣旨。日本の補助犬ユーザーのマナーが素晴らしいので、海外のユーザーにもそれを知っていただきたいということで、一般的な流れを紹介しているもの。まさに希望者の方が「補助犬ユーザーになったらこんな流れ、生活なんだな」というイメージがすごくしやすいと思う。当会に原稿があるので、活用いただけると思う。 中野座長 この資料の権利としては橋爪委員のところにあるか、それとも厚生労働省か。(確認) 厚生労働省の方にあるということ。とてもわかりやすい内容なのでこれを日本語にして利用したらどうかということについてご見解をお聞かせいただければと思います。 厚生労働省 日本語版このページに載せることは可能。日本語版を作成していただければ厚労省もそれで対応できればと思う。 中野座長 では今のご意見に基づいて日本語版を作成した上で、厚労省のページにも掲載をさせていただくということで進めさせていただきたい。 大竹委員 海外のもし良い例があれば、日本でも参考にできると思うので、そういうものも調べて、日本の今までのやり方進め方について、もし何か足りないところがあれば、海外のいいところを取り入れるということもいいと思う。アンケート結果の分析については、それぞれすごくいい面と悪い面とあったのでわかりやすかったと思う。海外の良い例があれば教えていただきたいということ、もしそれがまだでしたらこれから何か海外の良い例があればというところを考えていただくのはどうだろうか。 64ページ目 中野座長 この件に関しては、橋爪委員が先ほどの英語版も作られていて詳しいと思うので、発言をお願いします。 橋爪委員 まず、海外は日本と福祉制度が違っている。また、この補助犬法という法律も日本独自の法律になっており、海外の事例をそのままうまく持ってくるというのがなかなか難しいという現状がある。さらに、海外は犬の社会での受け入れが非常に進んでおり、レベルがかなり違う。海外では、当たり前に犬たちが社会に参加しており、ペットに近い犬たちのアクセス権もある国もある。そのような中、日本はなかなかそこまで真似ができない部分があるので、良い事例としては、海外では、もう当たり前に、アシスタンスドッグ、補助犬たちが社会にいますよということを伝えていくということが大事かなと思う。 大竹委員 文化の違いということはあるかと思う。しかし、いい面と悪い面、それぞれやはりあると思うので、一つ一つ確認していくのも大事かなと思う。一つの意見です。 橋井委員 まず、先ほど橋爪さんが説明された厚労省のページの件について。私どもの地元で、2026年に陸上のアジアパラ競技大会がある。そこでこれを参考にしたいと思うので、厚労省の方で、これを使用させていただくことは可能であるか。 次に、希望者向けのチラシについて、最後の方に、どのくらい金銭的負担があるか書かれていて、もう5年経っているからということで新たなものを書こうかとのことだが、私はその中で、盲導犬1頭に対して250〜300万円もかかるというお金の額を見ると、皆さん引いてしまうのではないか。行政から出るというのは知ってはいるが、ちょっとインパクトが強いという感じがした。 次に、今回のアンケートで、盲導犬ユーザーの回答数があまりにも少ない。Googleフォームに入っての回答が苦手だったのかなと感じている。 もう一点は、このアンケートで、仕事をしているかどうかを尋ねたかどうかを教えてほしい。 厚生労働省 今の点、確認ですが、拝借をされるというのは、このホームページのリンクを貼られるということでしょうか。それか、資料を使いたいという形のご要望でしょうか。 橋井委員 うちのホームページのところと、名古屋市のホームページのところに記載ができないかと。 厚生労働省 ホームページのリンクとかを貼っていただく分には全然問題はない。そういった形で活用いただければと思う。 橋井委員 わかりました。ただそのページの場所を調べるのが難しいものでして。 65ページ目 厚生労働省 メール等でこちらからご案内できる。 中野座長 育成に係る金額等については書かなくてもよいのではというご意見について、事務局からまずはお答えいただきたい。 社会システム 実際には、自治体から出されるにしても寄付金からにしても、ご本人から見ると、ほぼほぼ無償貸与になっていると思うので、どこかに参考として書いておくか、もう全く消すかどちらかかと思うが、厚労省さんはどのような見解か。 厚生労働省 大事に使っていただくため、これくらいの費用がかかっているということを認識していただくのもいいのかなとも思うが、確かにインパクトもあるので、悩ましいところだなと思う。 橋爪委員 この数字はすごく難しく、3種の補助犬を比べても違いはあるかもしれないし、最新の数字を本当に細かく出せているものではないので、この数字が一人歩きするのは怖いといつも思っている。チラシには金額が2度出てきているが、説明書きのところに、訓練費用としては実際このぐらいかかっていますよ、ただ無償貸与ですよ、とあれば、さらに特出しして右側の箱の中に書く必要はなく、1回出てくれば十分かもしれない。ユーザーになってからかかる金額をここでは強調したい。 中野座長 参考までであるが、私は教育の方の様々な政策にも関わらせていただいていて、文部科学省で「拡大教科書」というのを発行している。これ実はものすごくお金がかかっていて、1タイトルを作るのに300万円ほどかかり、1人しかユーザーがいなければ1冊300万円、10人いれば1冊30万円というような価格の付け方になっている。最初は金額が入っていて、大切に使ってほしいからという意味合いだったが、その金額を見たユーザーは、いやこんなに高いんだったら遠慮したいとか、本当は5科目欲しいけれど3科目で我慢しようというような話が出てきた。文科省では実際無償給付なので価格は掲載しなくてもいいでしょうということで、価格を掲載するのをやめた。問い合わせがあったときには、価格や総予算がいくらかはわかるようになっているが。少なくともユーザーに負担感を与えないということは重要かと思う。一方で、やはり特に育成団体からすると、それだけ費用がかかっていると知ってほしいという気持ちもあるかと思うので、表現方法については少し検討をしていただいた上で、少なくともユーザーが負担感を感じないというところがポイントだと思う。 橋井委員 この金額を見ると、ユーザーもそうだが、家族から、そんなにかかるもの貰ってはいけないと言われると聞いているので、意見として申し上げた。 木村委員 今のチラシでは、都道府県の助成制度があるということだけ書いてあるが、皆さんからの寄付で成り立っているということもきちんと書いておいてほしい。地方自治体からの助成は、訓練費用としてかかった額の半分くらいが目安になっていて、残りの半分は訓練事業者が負担していて、都道府県から助成が受けられない場合は全額訓練事業者が負担しているが、それは全て、国民の皆さんの寄付で成り立っている。 66ページ目 松本委員 チラシの緑色の箱は、「補助犬にかかる費用の目安」というタイトルで、一つ目が訓練費用、二つ目が自己負担費用という書き方をされているのが誤解を呼びやすいのではと思った。タイトルとしては、例えば、補助犬に関係するお金という大きな見出しをつけ、訓練費用はこれくらい実際かかり、それはユーザーが全額負担するのではなく自治体の補助とか訓練事業者が皆さんから寄付とかで募ったお金とかで賄われていますよ、ユーザーとして希望する場合の自己負担はこういうお金ですよ、という別立てで書くとよい。訓練費用の内訳と自己負担費用の内訳という今の書き方だと、もしも希望する人がぱっとこれを見たときに、訓練費用250〜300万円が自己負担なのかと感じるような書き方なので、訓練費用がどこから出ているかや、ユーザーがそれを負担するわけではないということもわかりやすい書き方ができるのではと思う。極端なことを言えば、250〜300万円をポンと出せばすぐ訓練してもらえるみたいな誤解やそういう詐欺などが起きないような表現の方法も必要かなと感じた。 中野座長 今とてもわかりやすいまとめ方の提案をいただいたので、この提案で整理をした上で、なおかつユーザーや家族が負担に思わないような表現にしていただきたいと思う。 続いて、橋井委員のご質問のあと2点は、調査に関わることでしたので、事務局の方からご回答いただきたい。 社会システム(高光) アンケートの中に、就労しているかどうかという質問はないが、就労に当たってどういうことに困ったかを、就労されている方にお伺いしますという形で聞いているので、72人のうちの36人の方が就労していてこの困りごとについて答えていただいているというふうに認識している。今回、電話調査まではできていないが、調査方法としては全国の盲導犬・介助犬・聴導犬の訓練事業者と使用者団体に依頼し、介助犬・聴導犬の方はGoogleフォームでお答えいただいたのがほとんどで、盲導犬の方は、質問内容をメールに直接書いてお送りし、それに答えを書き入れていただく形で回収した。電話までできていればもう少し増えたかもしれないが、いまアクセスできる限りの事業者にお願いはさせていただいたところ。ただ、この時期に別のアンケートもいっぱい重なっていて、多分ご本人に負担があるのでちょっと難しいと言われた事業者が一つあった。 社会システム(牧村) 補足すると、盲導犬施設連合会の5年に一度のユーザーアンケートの年にちょうど今年が当たっていて、それと重なりちょっと負担感が大きくてなかなか難しいかもしれないということをお話いただいた訓練事業者があった。 中野座長 いろんな事情があったわけですが、回答数は少ないので、今回の結果だけからいろいろ言えないところもあるけれども、ただ今わかった範囲の中で考えられることは進めていければと思う。橋井委員よろしいか。 橋井委員 はい、ありがとうございます。 67ページ目 松本委員 補助犬に関心を持った人たちが、その先に進むにあたって、いろいろ自分たちで調べることは貪欲に結構できると思うが、まず補助犬との出会いの場が大事ということがこれまでの話でもあったと思う。聴導犬の場合は、対象となる方は、大きく分けると、先天もしくはそれに近く、音のない生活がメインの方、他方は中途の方と、大きく二つある。それぞれ出会いのチャンスが違うと思うが、元々音に頼っていない生活の方たちに、聴導犬が有用と知ってもらうためには、補助犬に絞ったイベントや資料では、アプローチしてもらいづらいと思う。音はいらないと思っている人たちに、音を教えてくれるとこんなに助かりますよと伝えるためには、最初から補助犬を前面に出すのではなく、障害全体のイベントや聴覚障害者が集まるようなイベントの場で、一つの方法として補助犬があると知ってもらうような流れでないと、と思う。そう考えると、来年開かれるデフリンピックのように、聴導犬なんて全然考えていないような聞こえない人が集まる場というのは、結構いいチャンスじゃないか。もしかしたらその中に聴導犬と初めて出会って、関心を持ち、進めてみようと思う方も出るかもしれないので、そういう出会いの場としては、障害者としてのイベントもしくは一般のイベントの中に、補助犬を組み込む必要があると思う。そしてもう一つの対象である中途の人に対しては、先ほどの資料の説明の中に、相談に行ったときに提供される助言の中に、補助犬のことは含まれないと回答がほとんどで、その理由が、ニーズがないとか、説明する人の知識がないからとあり、これがとても残念。ニーズがあるかどうかなどわからないはずなので、こういう選択肢もあるという説明、助言はしてほしい。けれども説明する人がその知識がないせいで、あまり突っ込まれたら困るから聴導犬のことは触れないでおこうと思って控えてしまうのだとしたら、とても残念な話だと思うので、やはり相談を受け助言する立場の方たちに、きちんと補助犬を選択肢として出せるような知識を得てほしいと思うし、それがすぐに無理なのであれば、マニュアル、あんちょこ、そういう相談を受ける人たちにも用意して、それを見てもらうことによって、補助犬のことがわかるような、また訓練事業者も、どこってこちらが出すのではなくて、受け取る側が選択できるような資料をきちんと作って、相談を受ける人たちのマニュアルにしてあげられるようにしないと。自分たちがよく知らないから言わないでおこうとなってしまうと、補助犬との出会いの場をそこで奪われてしまう…と先ほどのご説明を聞いて思ったので、ちょっとそこを考えていければなと思った。 中野座長 広報のやり方は、単にパンフレットを作っただけではやはり駄目なので、今とても貴重なご意見いただいたと思いますので、基本的には松本委員からご指摘があった、しかも同じ聴覚障害でもニーズの違うユーザーがいるので、そこを考えた上での広報の仕方をぜひとも今後検討していただきたい。 木村委員 資料の17ページの補助犬希望者向けツールに掲載すべき内容について。私が介助犬と生活をしたいと思った当時は、妻と2人暮らしで、妻は昼間は出かけるので、1人で留守番(していて)しながら在宅勤務していた。そのときに車椅子から落ちたら連絡手段がないことや、仕事中に物を落としたら拾えなくて仕事がずっと中断してしまって困っていた。それでちょうど犬の雑誌の中に介助犬のことがあって、介助犬が電話を持ってきてくれたり、落としたものを拾ってくれるということを知って介助犬使用を考え始めた。このように、介助犬の生活動作のサポートを詳しく書くことで、自分が必要としている介助動作をしてくれるんだとわかれば、関連団体に連絡してみようと思うのではないかと思うので、それを加えていただきたい。あと2番目の「補助犬との暮らしについて」のところで、介助犬使用者は肢体不自由者なので、犬の世話が難しいと思って使用を諦めている人が多いので、援助を依頼しても構わないことだけではなくて、実際に補助犬使用者がどのようにして介助犬の世話を家族に依頼しているのかや、中には介助犬の散歩を大学生のボランティアに頼んでいる人もいるので、そういう具体的な例を明記すれば、自分もそのような形で介助犬を迎えられるのではと思ってもらえるかもしれない。特に介助犬のチラシについては、補助犬の使用や世話についての項目を詳しく書いていただきたい。 68ページ目 中野座長 非常に素晴らしいご提言をいただいた。それぞれのユーザーの方々に何が一番アピールポイントになるのかを改めて聞いていただいた上で、少なくとも今回の委員の皆さんにはしっかりとヒアリングをしていただいて、ぜひ具体的で魅力的な例を挙げていただきたいと思う。 松本委員 今のところで、補助犬がどのような目的で位置づけられているかというところの赤字で追加する部分に、補助犬の使用については、身体障害者補助犬法で、使用する身体障害者に対する義務等や同伴することができるための措置等について定められています、と書いてある。たしかにこの通りですけれども、こういうことを書くときって、オススメしたいわけなので、「義務」はちょっと後にして、あと「措置」という言葉は行政の怖いイメージもあるので、きちんと補助犬法で利用できるようにちゃんと定められてますよ、それに伴って義務もありますよ、くらいの表現の仕方にしないと、いまの表現だと、すごく引いてしまう。安心して使えますよというということが伝わるような表現方法にしていただいた方がいいと思う。Welcomeしたいわけですから、やはり肩に力が入るような言葉使いはできるだけ避けるとよい。 中野座長 これも貴重なご意見ありがとうございます。多分、より正確に書こうとすると、行政用語になってしまう。報告書の中では正確さを求められるかもしれないが、やはり理解啓発という中では、わかりやすさ、読む人の立場で書いていただいた方がいいと思うので、今のご意見に基づいて修正をお願いしたい。 大竹委員 皆さんご承知の通り、障害者差別解消法の一部改正が今年の4月にあった。企業に対しても合理的配慮の提供が法的義務に変わった。厚生労働省も一生懸命アピールしてくださっていると思う。一方で補助犬法もある。私は大阪に住んでいるが、大阪府も計画を作って、障害者差別の解消についてアピールしているが、補助犬法についての記載はあまり見ることがない。この二つは法律は違うけれども、差別解消法の啓発の中にこの補助犬法も入れ込むのはどうか。例えばお店に補助犬を連れていって拒否された例は今までたくさんありますよね。それは障害者差別に繋がると思うので、そのあたり、どのように考えていくのか。私が言いたいのは、障害者差別解消法と補助犬法、法律としては別ですけれどもこの二つをうまく組み組み合わせてアピールしていくことはできないかということ。 中野座長 これについては、議題の2番目の方で事務局が提案を考えているが、今ご意見があったので事務局よりご回答いただきたい。 社会システム 今日の検討会の参考資料にはないのですが、前回の検討会の参考資料の中にあった、各業態向けに、受け入れ拒否をしないでください、こんなふうに受け入れるととてもいいことがありますよ、とか、こんなふうに受け入れていただいて補助犬ユーザーがとても楽しくお店に通っています、ということを整理し、飲食店・小売店・医療関係・交通機関・ホテル向けという、5つのリーフレットを一昨年作ったのですが、それに差別解消法の改正のことを今回入れさせていただいて、補助犬法もあわせて受け入れは合理的配慮の一つだということをアピールしていきたいと考えている。 69ページ目 中野座長 今のように事務局では考えているとのことですので、いま大竹委員のご指摘の点については考慮した上で最終的なまとめにするということです。 橋爪委員 今の差別解消法の中での補助犬同伴拒否の取り扱いについてだが、いろいろなところで、実は差別的取り扱いの代表的な事例として、盲導犬の同伴を断ることは、障害者差別解消法の中の差別的取り扱いに当たりますよということは、いろいろなところで明記されている。けれども、大竹委員がおっしゃっていただいた通り、それが一旦自治体のところに行きまして自治体の方がそのような啓発をされるときに、補助犬のことを取り上げていただけているかというと、そこが足りないのかなと思う。ぜひ今回の機会に厚生労働省の方でもそのような差別的取り扱いの事例として補助犬ももっと伝えてほしいということは広報していただきたいと思った。 橋井委員 盲導犬使用者は、若い方が少なく、高齢ユーザーもだんだん減ってきてるという状態では。盲導犬の歴史は長いので。これはペットを飼っている人たちもそうだが、年をとってくると、自分に何かがあってはいけないということで、次の犬を辞退される方がある。自分の周りでもやはり何人か聞いており、それはやむを得ないと思う。すぐご本人が病気とか何かで使用ができないとなると、何かもったいない気がする。若手の人に関しては、私はいま視覚障害者にとって自動車が静音になってきたりとか、電動キックボードがあったりとか、その中では、やはり盲導犬を使用するのが一番安全かなと思うが、ただ、訓練のために仕事を1ヶ月休むのができない。以前は盲学校の先生が夏休みなどを利用して取ったというのをよく聞いたが。これを厚労省として、何か、休んだ際の何か補助をしてくれるとかそういったものを考えていただけると、またよろしいのかなと。特に中途失明の方にとっては大切な問題と思う。 中野座長 今のご指摘、私も共感するところではあるが、今回の事業の中では、そのこの仕組み全体、厚生労働省の仕組み全体に対して議論ができる会議体ではないので、いま厚生労働省のご担当の方は聞いておられますので、今の課題についてはお持ち帰りいただいて、別な会議等で今のご意見を反映させていただけるようにご検討いただければと思う。 橋井委員 また、補助犬の周知がなかなかできないことについて、とくに訓練センターでは人材不足ということで、なかなかイベントへの人の派遣が難しいと聞いている。私の地元でも、何かやろうかなと思ってもなかなかそういった人が来てくれない。使用者の方に来ていただく場合、当然、得意不得意もある。また総合学習などで学校へ呼ばれる場合もあるようだが、これは訓練センターでマニュアルみたいなもの、今もあるかとは思うが、そういったものも活用して、使用者の方に積極的にそういうイベントに出ていただいてお話をしていただく、学校関係でも誘われたら積極的に出ていただく、そういう体制をとっていただくと、もっと広がるのかなと思う。 70ページ目 中野座長 これも貴重なご意見で、どのように広げていくかということを考えていかないといけないところですが、今年度のテーマとしては、まずはどのようなパンフレットを作っていくか等々というところをまずしっかりと抑えたいと思うので、これはぜひ厚生労働省で来年度以降の課題の一つとして位置づけて発展させていただければと思う。ご意見として伺わせていただいた。 (2)検討課題A(受入側に向けた啓発ツールのブラッシュアップ)について 木村委員 いまお話のあった見開きのリーフレットというのは、以前作った受け入れ事業者向けのリーフレットの最後に付くものなのか。それとも、災害時という単独の何か啓発ツールを作るということか。 社会システム 単独のというところに近いと思う。業態別に作っている内容も、こちらにも入れ込んでいきたいとは思っているが、災害時はちょっと業態の受け入れ拒否とは異なっているので、逆にその受け入れの場合の配慮点とか対応、どうしたらいいという話なので、別と考えていただいていいと思う。 木村委員 わかりました。災害時の補助犬受け入れのマニュアルみたいなものが一つ新しくできるということですね。それと、先ほどの私たちへの聞き取りの話、zoomとかであればいつでも時間が合えば対応可能である。 社会システム ありがとうございます。またメールで皆さんと調整させていただければと思う。 木村委員 補助犬法の中には、国、地方自治体は、補助犬が果たす役割の重要性について国民の理解を深めるように努めなければならないや、国民は補助犬を使用する身体障害者に対して必要な協力をするように努めなければならないと、努力義務の規定が書かれている。このように、災害時にも、国民の皆さんに、障害者が必要とする協力をしてもらえるように、これらのことを、災害時のマニュアルにもきちんと明記していただけるとありがたい。 大竹委員 今のお話は、盲導犬についての話だったと思うが、介助犬と聴導犬についての場合、使用者の数が本当に少なく、事例を出すのは難しいのかもしれない。ただ災害時、介助犬・聴導犬ユーザーもいらっしゃると思うので、このような時どうしたらいいのか。私はちょっと経験がないのでわからないが、補助犬なのでおそらく、普通のペットと配慮は違うと思う。ユーザーは避難所に補助犬を連れていくことになると思うが、そのとき、例えば、犬をケージに入れて連れていく配慮も必要、というようなことも書かれるのかどうか。 中野座長 これは、ヒアリングをしたのが盲導犬ユーザーというだけで、リーフレットにはもちろん補助犬全体について書き込んでいくというようにご理解いただければと思う。 大竹委員 盲導犬の例を載せていただいているが、今のご説明だと、後に聴導犬とか、介助犬についても載せるというか。 71ページ目 中野座長 事例に関しては、盲導犬のユーザーの事例しかないので、盲導犬のもの載せますが、どんな配慮が必要なのかについては、聴導犬や介助犬も全て含めた内容として記載するということです。 大竹委員 わかりました。 中野座長 司会の立場で申し訳ないが、中野から一点。実は防災に関しては、管轄しているところが、例えば内閣府、国土交通省と、多省庁にわたっている。そして、内閣府のガイドラインには、一次避難所の中に「福祉ゾーン」というのを設けるように書いてあるが、そのガイドラインの中には、ペットのゾーンを決めているというような事例は書かれているが、障害のある人たちへの配慮の中に「補助犬」というキーワードは出てこない。なので、これはぜひ厚生労働省から内閣府や国土交通省に申し入れをしていただいて、ガイドラインの中に補助犬のことを書き込んで、「等」の中に含めるのではなく補助犬も明確に書き込んでいただいて、避難の際に補助犬がちゃんといることができるゾーンを設定していただくような、そういうお願いをするのが一番効果的と思う。そして、今回の話は、ユーザーがやはり不安に思うことはあると思うので、ユーザーに向けてのメッセージというのはすごく重要だと思うし、同じく自治体に向けてのメッセージはあっていいと思うが、その自治体に向けてのメッセージの中にも、内閣府のガイドラインにはこういうふうにゾーンを決めることが大事だと書いてあるけれども、補助犬のことも含めて設計してほしいというように、今回の資料の中に書いていただいて、それを申し入れていただくのがいいのではないかと思います。この福祉ゾーンに関してはまだ十分には知られていなくて、各自治体がガイドラインを作っているが、福祉ゾーンというのを考えていない自治体も今のところはあるので、福祉ゾーンを作っていただくということと、一緒にこの補助犬のことについて広めていくのが重要と思う。 中野座長 本日かなり多くの建設的なご意見をいただいた。今日のご意見に基づいて、さらにあの内容をブラッシュアップしていただきたいと思う。本日発言を十分にできなかった方、もしくは後で気づかれた点があれば、後日で構わないので事務局にご連絡いただければと思う。 (3)今後について 社会システム 皆様ありがとうございました。先ほど申し上げたように、補助犬ユーザーの3名の委員の方については、ヒアリングのお願いを年明けにメールにてお願いをさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。 それから、過年度作成のリーフレットやチラシを改良していくのが本年度のアウトプットということになっており、第3回検討会の前に、皆さんに見ていただいた方が、いろいろ意見が出ると思うので、なるべくその前にご意見がいただけるように、できたところで委員の方々には送付させていただいて、ご意見をいただいてという形で、第3回までに進めていきたい。第3回検討会についてはまた日程を調整した上で皆様にご連絡をさせていただきたいと思う。 中野座長 他に皆様から何かございますか。 72ページ目 木村委員 今回の会議に関わることではないが、都道府県の広報活動について。厚労省は毎年ショッピングセンター等でイベントをやっているが、そういうノウハウを自治体にも勧められるような何かマニュアルなどを用意して、各自治体がそれに沿ってイベントを実施して、補助犬の広報を進めていくような施策をとっていただければありがたい。意見です。 中野座長 ご意見ということですので、厚生労働省の方で今後ご議論いただきたいと思う。 松本委員 先ほどもちょっと触れたが、来年の東京でデフリンピックが開かれ、世界中から聴覚障害者が集まるということで、聴覚障害者界隈は今それに向けて盛り上がっているところであるが、それに関連したイベントなども来年に入るといくつか行われる予定だと思う。そういうところで、これは聴導犬限定になってしまうかもしれないが、なにしろ聴導犬の数が少ないので、聴導犬を広報できるような、ブースなりイベントなりをコラボしてやることも、厚労省さんなり、ちょっと企画を考えていただけたらどうかというアイディアです。 中野座長 ありがとうございました。何かお土産がたくさん厚生労働省には来ましたけれども、ぜひこれが年明けた報告のときにはお年玉として返ってくるといいなと思いますが、よろしくお願いいたします。勝手なことを申し上げて申し訳ございません。それでは、長時間にわたってご議論いただきありがとうございました。 (4)追加ご意見 竹田委員 1. ヘルパーによる補助犬のケア 平時から、障害者本人とそのヘルパー、場合によっては補助犬の訓練士やケア担当者が連携し、災害時に補助犬のケアをヘルパーが行うための手順や役割分担を明確にしておくことが重要だと思います。 平時からヘルパーが補助犬のケアに携わる機会をつくることで、災害時にもスムーズに対応できるようにしておく必要があると思います。 2. 避難所での補助犬の食糧配給対象明示 避難所運営者や自治体が、補助犬も対象となる食糧や物資の配給計画を策定し、関係者に補助犬専用の食糧・水や医療用品の備蓄を周知する必要があると思います。 避難所において、補助犬がペットとして扱われず、障害者の生活支援の一環として認識されるようなシステムとして、身分証明や識別バッジを用いるなどして、食糧配給時に補助犬であることを証明できるようにしてはいかがでしょうか。 73ページ目 ■第3回検討会議事録 (1)周知用リーフレットについて 木村委員 リーフレットの育成団体のリストであるが、介助犬の場合は23団体から、第2種社会福祉事業の届出がされている(2024年12月末現在)。しかし、実働犬がいるのは9団体しかない(2024年9月末時点)。 盲導犬の育成団体は国家公安委員会から認められているため、しっかりとした団体であるが、介助犬の場合は、NPO法人、法人格もないところから、社会福祉法人や一般社団法人とレベルがかなり違う。同じような形で全部載せると、使用希望者に誤解を与えてしまうような気がするので、リストは載せない方がいいと思う。 橋井委員 周知リーフレットは、かなり細かく掲載されており、よくできていると思う。特に盲導犬の北海道から九州までの育成団体リストには、ひとくちコメントで何となくそれぞれの事業所の方向性が出ているのが良いと思い、興味深く読ませていただいた。 私ども日視連としては、周知をどうしたらよいかという視点で言うと、各自治体へ送付していただきたいと思う。また、それぞれの地域の訓練センター等で歩行がどうしてもできない人が、同行援護を利用したらよいか、盲導犬を使用したらよいかといったことについて、声をかけているようなので、そのようなところに配るとか、あるいは、視覚障害者がよく出入りする点字図書館などで周知をしていただくと広がっていくのかなと思っている。 松本委員 このリーフレットを拝見しての第一印象としては、文字がやはり多い。細かいということがすごくインパクトとして強く、正直ちゃんと読んでくれるのかと思う。表紙のページには、身体障害者補助犬についての説明の重複がある。そういう重複を外していくともう少しすっきりするのではないか。 もう一つはデータとしての配布だけではなく、印刷したものでの配布ということも考えると、中面の2ページ目にURLが書いてあるが、QRコードの方がアクセスしやすい。こうしたことでも内容がすっきりするのではないか。 木村委員 介助犬と聴導犬の3、4ページに「多くの人が使用する施設」という言葉が出てくるが、多くの人が利用する施設というと、個人経営の街のラーメン屋さんなどは受け入れなくてもよいのかという誤解を与えてしまう。本来は、「一般の人が普通に利用できる施設」という意味なので、補助犬法の「不特定多数が利用する施設」としていただきたい。 松本委員 身体障害者補助犬法と障害者差別解消法について書いてあるが、「…法…によって」の「によって」はいらないのではないか。そうしたちょっとしたところを削ってすっきりさせてほしい。 大竹委員 表紙にQRコードが載っているが、この内容は手話言語化されているのか。特に補助犬の説明と、聴導犬の説明のところには、必ずQRコードで手話を読み取れるようなものを入れて欲しい。 74ページ目 事務局 このQRコードは、字幕がついている動画に飛ぶようになっている。今回の予算上、手話言語まで入れるというのが難しいかもしれないところはある。今後の課題である。 大竹委員 ぜひやはり手話言語で載せていくのがこれから本当に大切なことだと思う。文字だけでは足りない。 中野座長 このQRコードのリンク先は、過去に厚生労働省で制作された動画であり、本年度の事業の中で制作したものではない。これについては、厚生労働省の方に持ち帰っていただき、今後広くこの様々な方々に知っていただくためには手話も付ける必要性があるということを省内でご議論いただいて、もし動画が更新されれば、このパンフレットはこのままであったとしても後に手話で閲覧することができるようになるというふうにご理解いただければと思う。 大竹委員 今の方法で構わないと思うが、もしできるならば、パンフレットに手話言語で説明ができるのであれば、「QRコードを読み取ると手話言語で見ることができます」ということも入れていただくと、周知がしっかりできるのではないかと思う。 松本委員 聴導犬の面の、身体障害者補助犬に係る法律の項目で気になっている点が一つある。合理的配慮の提供のところに、下の例のように、聴導犬同伴の受け入れも合理的配慮の一つとされていますとなっているが、聴導犬同伴の受け入れは、合理的配慮ではなくて、補助犬法上の義務ではないか。また、その下の例、マスクを外して会話したという例であるが、例を出すのであれば、「聴導犬を同伴していることで、聞こえない人だと気づいてくれて、先方からマスクを外して相談で対応してくれた」とすれば、聴導犬を連れてお店に入ることの一つのメリット、効果の例にもなると思う。補助犬のリーフレットであるならば、補助犬を連れているおかげで、こういう配慮をしてもらえたという例を載せてほしい。 橋爪委員 実はこの合理的配慮の提供例というのはすごく難しいと思っており、本日ご参加のユーザーさんたちにお伺いしたい。 合理的配慮という事例が私もクリアにわかっておらず、補助犬を同伴する部分に関しての合理的配慮って実はないのだなと思っている。 ということで、ここに挙げるのはどういう事例がいいのか、まさに今おっしゃったマスクを取って口を見せるとか、筆談をするiPad等、UDトークなどでお話をする、視覚障害であればメニューを口頭で伝える、点字のメニューを用意する、肢体不自由であれば、段差を解消するもしくは段差を上るときのお手伝いをする、スペースを少し開けるとか、そういうことになるのかなと思うが、ユーザーさんたちいかがでしょうか。 木村委員 介助犬リーフレットの例に「介助犬の同伴スペースもある席に案内された」とあるが、同伴スペースというと何か特別なスペースを準備したような気がしてしまうので、同伴スペースではなく、「介助犬がゆったりと待機できるスペースのある4人席を案内された」というふうな形に変えると合理的配慮になるのではないか。 75ページ目 中野座長 こうした事象は、事前的改善措置である。ユーザーが来たときに備えた事前的改善措置として用意しているという話であり、合理的配慮は個別性があるものである。同じ介助犬ユーザーであってもニーズは違う。違うニーズを言ったときにそれに対応していただくというのが、合理的配慮の概念である。 合理的配慮と事前的改善措置の違いはわかりにくいところがあるので、この部分については、いま言っていただいた皆さんの意見も参考にさせていただきながら、もう一度事務局および厚生労働省の中で整理をさせていただく必要があるかなと思う。最後にもう一度皆さんには確認をしていただくが、法律との整合性はすごく重要だと思うので、一旦この部分に関しては、持ち帰らせていただければと思う。 なお、私の感想としては、合理的配慮をここで強調するのも大切であるが、もっと重要なのは、差別的取り扱いの禁止である。補助犬の同伴を拒否するというのは、差別的取り扱いであって、あってはならない。 それから、施設側は、拒否するときに様々な言い訳をする。例えば「他のお客様にご迷惑ですから」のような言い訳があるわけですが、法律的にはこういう言い訳は通用しませんよということを明確に書いていただく方が重要ではないかと私個人としては思っている。 その辺も含めて、再度精査をさせていただきたいと思う。厚生労働省、事務局それでよいか。 松本委員 一旦持ち帰るということだが、聴覚障害者の場合、介助犬ユーザーさんなどのように、外見上障害があることがわかりにくい障害であり、そういう点で聴導犬が目印になって、合理的配慮ではなく、普通に配慮してもらえたということはとても大きな魅力だと思う。そこを強調できるような事例をうまく出していただけると、このリーフレットは聴覚障害者の方に聴導犬をおすすめするプロモーションリーフレットなので、ありがたいと思う。 中野座長 今の点とても重要だと思っている。その上で、「聴導犬との暮らしとは」などユーザーに向けてのメッセージが書かれているページにそのメリットという形で掲載し、法の説明の部分は、法の説明に徹した方が良いのではないかと思う。そこは少し整理をさせていただいた上で再度もし法律の説明のところにメリットが書ければそのように記載するような工夫をしていただきたいと思うがいかがか。 松本委員 法律の部分には、「拒否は、差別的取り扱いで、法律違反」と書いていただきたい。つまり、当事者側は仕方ないと諦めるのではなくて、受け入れは義務であり、拒否されることは差別的取り扱いであり、受入れが法律的に認められているというところを強調していただきたい。 さらにそのメリットとして、先ほどのこっちが求めなくても配慮してもらえたみたいな例を載せていただくって形で私はいいと思う。 大竹委員 リーフレット内にイラストがいくつかあるが、例えば、聴導犬の場合、本人と聴導犬がいて、ヤカンが沸騰していることを聴導犬が本人の体をトントンと叩いて知らせるというような動きがわかるようなイラストだとすごくわかりやすいと思う。 今のイラストはただ単に犬が本人の横に座っているだけである。また、介助犬も、落としたものを口にはさんで渡すというイラストの方がわかりやすいと思う。 76ページ目 松本委員 屋外でということを考えるのであれば、後ろから車が来ているのを、犬が飛び付いて教えているというイラストであれば、外出時の仕事のイメージがつかめる絵になるのかなと思う。 ペットと同じように伝えているだけではなく、一緒にいることでこういうサポートを受けていることが見てわかりやすくもなるので、このイラストの工夫をもうちょっとしていただければ思う。 木村委員 介助犬の認定を受けるまでというフローの図の中で自宅訪問という中に、「自宅で日常生活を確認します」としか出ていないが、「障害の内容や、ニーズを確認します」まで入れてくれると、家の状況だけでなく障害のことや必要な仕事なども確認するということがわかってもらえるのではないか。 イラストであるが、過去に厚生労働省が制作した補助犬Bookなどに介助犬が何か仕事をしているイラストがあったと思うので、そちらを使ってもらえればいいのではないか。 中野座長 イラストに関しては、権利処理の話もあると思うので、確認をしていただいた上でより内容を表現するようなイラストとしていただきたい。 松本委員 認定を受けるまでのフローに「待機」という項目があるが、待機が必ずあるわけではないので、わざわざここに入れなくてもよいのではないか。 中野座長 細部の詰めはとても大切である。わざわざネガティブに捉えられる可能性のあるようなことは確かに入れなくても良いかなと思う。もう一度精査をさせていただきたいと思う。 最後に確認をさせていただきたいことがある。最初の説明で、盲導犬のみ指定法人訓練施設一覧があって、それ以外に関しては一覧を掲載しないという方針で事務局はリーフレット案を出しているが、これについての追加でご意見はないか。 これまでのご意見では、盲導犬に関しては、橋井委員からはそれぞれの訓練施設の特徴も一言書いていただいているので盲導犬に関しては掲載をしていただけるといいのではないかというご意見があった。それ以外に関して統一するかどうかを含めて、ご意見があればいただきたいと思う。 大竹委員 補助犬法に基づく事業であれば、少ないからといって省くという考え方はおかしいのではないか。掲載するとすれば、全事業者を掲載し、介助犬事業者であれば介助犬のマークをつけるなどすればよいのではいか。 中野座長 取り扱っている訓練事業所を全部掲載し、その中で盲導犬のみとか盲導犬と聴導犬というふうにマークをつけたらどうかというご意見だが、3種類の補助犬の訓練事業所を全部載せるとものすごい数になる。 重複はあっても30程度の団体となると、それだけで多分2ページをとってしまうので、この中には収まりきれなくなる可能性があるのではないかという懸念がある。 77ページ目 松本委員 盲導犬と介助犬聴導犬の訓練施設の大きな違いは、盲導犬は国家公安委員会指定の団体であるが、聴導犬・介助犬に関しては、第二種福祉事業としての届け出をしているだけの団体。そのため、実績があってもなくても申請すれば掲載されるというのが実情だと思う。実際、実績が全くないのに、聴導犬・介助犬育てますよと言っている団体も届け出としては出しているのでリストに載っていることになってしまう。 なので、もしも介助犬・聴導犬も載せるというのであれば、第2種ではなくて、厚生労働省が指定している指定法人を乗せる方がよいのではないか。 しかし、正直その指定法人も、訓練事業者との線引きが難しいところもある。こうしたことを鑑みると、介助犬・聴導犬の訓練施設を載せることには正直反対である。載せるならば、百歩譲って、指定法人だけだと思う。 山本委員 盲導犬の場合は、11団体あり、受け入れているかの相談をしたり、一般の障害者の方についても窓口がある。介助犬・聴導犬も相談窓口機能を提供している団体があれば、そこを書いておいた方が、このリーフレットの元々の趣旨が、啓発できるのではないか。窓口がもし1団体2団体でもあれば、そこを書いておけばいいのかなと感じた。 橋爪委員 悩ましいポイントであるが、確かに、今、第2種社会福祉事業の届け出をしている団体は介助犬も聴導犬もそれぞれ20数団体ある。その中で実際に育成実績があるのは10団体弱であり、さらに、ここ数年で育成実績があるとなるとさらに狭くなる。ただこれをどこで線引きするのか。「全部とりあえず載せておいて後は自己責任で選んでね」とするのか、アンケートの返答があったところだけするのか、非常に悩ましい。しかし、せっかくパンフレットを作るのに見た方が希望したいと思ったときにどこに連絡していいかがわからないというのもよくない。 厚労省の事業として作るものなので、どこの線引きをするのがいいのかということをどう考えるかなのかなと思った。 中野座長 難しい問題をいくつかはらんでいるようであるので、この点については、もう一度事務局および厚生労働省の方で協議をしていただいた上で、皆様のご意見も参考にした上で最終的な判断をさせていただきたいと思う。 (2)災害時の配慮にかかるリーフレットについて 木村委員 1ページ目の「この3種類の補助犬を総称して、身体障害者補助犬」という言葉であるが、「補助犬」は身体障害者補助犬の略称なのに2回出てきているので、「盲導犬・聴導犬・介助犬を総称して身体障害者補助犬」としなければ文章的におかしいと思う。 竹田委員 教えていただきたいのであるが、災害時の補助犬の受け入れというのは、配慮なのか、それとも義務になるのか。 事務局 受け入れは義務であり、義務で受け入れた上でどんな配慮をするのかというのをこのパンフレットにまとめている。 78ページ目 竹田委員 そうであれば、受け入れが義務であって、必要な配慮をしなければいけないというようなことをコンパクトに最初に伝えた方がよい。 松本委員 最初の「防災担当の皆さまへ」の下の補助犬法のことを説明しているところに、公共施設での受け入れ義務というのは、災害時の避難所にも当てはまるという書き方、つまり、補助犬法ではざっくりと公的な施設と言っているが、それは災害時の避難所も含まれていることを強調する書き方をしていただくことがこのリーフレットでは大事である。 ユーザーとしては、避難所がどう位置付けられているかわからないと、本当に受け入れてもらえるのかと不安を持つので、避難所に入ることが法律上認められているということを前面に出した方が、このリーフレットの目的としては大事なことなのかな、避難所の義務だということを認識してもらえたらいいかなと思う。 中野座長 今回、木村委員からのご提案で明確に「防災担当の皆様へ」というメッセージが頭につき、なおかつ自治体の防災担当の方に配布されることになるので、その意味では非常に良いご提案をいただき、効果的なところに集中的にパンフレットを配布できるのではないかと思う。 もし何かまた文言等で気づきになられた点があれば、後ほど事務局よりお話のある期日までにご意見をいただきたいと思う。 (3)今年度のとりまとめについて 木村委員 この2種類のリーフレットは、基本的には都道府県・政令市・中核市までしか配布されないのか?補助犬の貸与希望を出す場合、最初に市町村へ相談に行くので、そこで資料が市町村にないというのは残念である。全市町村となると数が多すぎるとは思うが、できれば僕の宝塚市ぐらいの市町村には使用希望者向けの資料や防災のリーフレットを送ってくれればすごくありがたいが、どの程度まで送ることが可能か。 事務局 災害時のリーフレットは基礎自治体に配る予定である。自治体に対しては、リーフレットの印刷物を送るのではなく、カラーの葉書にデータ元のQRコードを印刷してお送りする予定である。災害時のリーフレットはこのように基礎自治体に送る予定であるが、対象が防災担当であり、使用希望者の窓口となっている福祉担当と宛先が違うので、約1700のハガキを2枚ずつ送るとなると、予算的に難しい。工夫を考える。 中野座長 事務局からは苦しいご説明があったが多分予算の制約もあるので、できる範囲のところで効果的に配布できるようにする。少なくともデジタルの媒体ではそのQRコードを紹介し、アクセスしてそれぞれの基礎自治体で印刷して利用することができるようにはするということなので、できる範囲で頑張っていただきたい。 厚生労働省 3種類のリーフレットの周知については、厚生労働省と自治体が繋がっているシステムで、電子媒体であれば、約1700の基礎自治体に向けて案内することは可能なので、その利用を考えてみる。 防災の方のパンフレットについては、内閣府防災の方にも働きかけるということはしてみようと思っている。 79ページ目 橋爪委員 もう一つ提案であるが、プッシュ式というか、ユーザー当事者の方がご自身の自治体に持ち込むという形も取れたらいいと思う。ユーザー当事者団体にも送って、「ご自身の自治体に届けてください」というアナウンスもできたらいいのかなと思った。 中野座長 ぜひ、それぞれの団体からも発信をしていただければと思う。発信にあたっては、自由に許諾を取る必要がなく実施していただけるということであるので、SNS等も活用していただきたい。若者に届けるためには、インスタ、TikTok動画なども作成していただける団体があれば非常にありがたい。 大竹委員 このパンフレットには手話動画がないのは困る。日本語には、読み書き、話し言葉、手話言語があり、これがこれから当たり前になると思うので、そのことを考えると、このパンフレットから厚生労働省のホームページに飛んだところで、「手話言語は今工事中」とか「現在手話言語動画を作成中でいついつまでには作成しようと思います」といった予告のような形でもいいので記載してもらいたい。 中野座長 厚生労働省のご担当は、今ここでの即答は難しいかと思う。多分、省内に持ち帰っていただいてご議論いただく必要があるかと思う。 厚生労働省 表紙右上のQRコードのことを話していると思うが、これは厚生労働省の補助犬の外国語のページ、にアクセスされるもの。これに手話言語をつけることは確かに大事な課題であると認識しているが、補助事業の予算の範囲内では明確なお答えを用意できない。また予算化をして、今までのリーフレット等について手話言語化していくといったことも検討してまいりたいとは思うが、今のところホームページに工事中の表記をすることもなかなかお約束はできない状況ではある。 橋爪委員 このQRコードを載せましょうとなった経緯は、前回の検討会の中で、パンフレットやイラストだけではわかりにくい、補助犬が動いている様子とかどんなお仕事をしているかというのが紹介される動画があったらいいよねということで、厚労省の動画の中で実際の実写版の映像が載っているのがこの外国語ページのみだったので、ここに掲載することとなった。 確かにいきなり外国語の補助犬サイトが出てくるので、これを外国の希望者向けの情報と捉えるのか、ここの中にある動画を見てくださいなのかというのは、少し説明が足りていない部分がある。手話付きの動画があるかは探してみたいと思うが、厚労省のサイトの中で紹介されているものの中にはなかったと思うので、どこまでの情報を載せられるか、もう一度検討が必要かなと思う。 中野座長 予算的な問題で、はっきりとした回答がなかなかできない内容かと思う。 ただ、大竹委員がおっしゃるように情報をちゃんと保障する必要性がある。この事業が始まるときにはパンフレットの手話言語での公表まで含めて予算化されていないが、今後は、情報保障が必要な場合には、手話言語で成果物を出すために、予算措置を最初から取っていただく必要性があることが今、非常に明確にご意見として出た。 今回に関してはどこまでできるかは、最大限努力していただけるとして、次には必ず事業を起こす時点で、その情報保障まで含めて予算化していただきたいというふうに、中野個人の意見であるが、厚生労働省にお伝えしたいと思う。 80ページ目 大竹委員 心強いアドバイスありがとうございました。 今後は、聞こえない人が手話で説明してもらうととてもわかりやすいので、ぜひこれからは手話動画を考えていただきたいと思う。 文章ばかりだと、手話言語は省かれたのかとか、違うこととして捉えられても困ると思うのでこれからはぜひ手話言語を検討事項に入れていただきたいと思う。ご理解いただきありがとうございます。 山本委員 先ほどの各育成団体のリストであるが、盲導犬育成団体の中に日本補助犬協会という事業者があり、3種類の補助犬の育成を行っている。そこを介助犬・聴導犬の相談場所としてもいいかと、一案として挙げさせていただいた。 中野座長 日本補助犬協会から使用者の皆さんへのメッセージの中に、3種類の補助犬の育成をしていますということは書かれており、これを見ていただくとわかるかと思う。 ただ、ここの団体が全てについての窓口になれるかというと必ずしもそうではない可能性があるので、これはあくまで盲導犬の施設一覧の中でそのように記載されているというところにとどめさせていただければと思う。 橋爪委員 災害時の配慮についてのリーフレットであるが、タイトル自体を「災害時における身体障害者補助犬(盲導犬・介助犬・聴導犬)の同伴の受け入れは義務です」としてしまったらいいのではないかなと思う。そこから義務なんだと思って勉強していただけるようなリーフレットになればいいかなと思う。 (4)各委員の感想・挨拶 橋爪委員 皆様1年間ありがとうございました。補助犬のユーザー団体の皆さんはいつもいろいろお話をさせていただいていますが、特に今回は、障害当事者団体として日本視覚障害者団体連合様、全日本ろうあ連盟様、全国脊髄損傷者連合会様に委員に入っていただいて、一緒に議論できたということがとても価値があることであったと思っております。 まだまだ補助犬の分野、未熟な部分、足りない部分がありますので、いろいろご指導いただきながら、皆さんと一緒に進んでいきたいなと改めて思う会になりました。 ありがとうございます。 81ページ目 橋井委員 本当に1年間皆様お世話になりました。ありがとうございます。周りに盲導犬使用するものが何人もいる中で、やはり盲導犬の実働数は多いときは1051頭、しかしこれが今800頭を切ったというのを聞いていますと、残念という言葉しか出てきません。なぜここまで減ったのか。これはやはり若年層が少ない、高齢者もだんだん年を取って諦めるということなのでしょうか。やはり若年層へ行き渡るような方法を考えていかないと、先細りとなってしまうのかなと危惧しているところでございます。 まだ、やはり1頭目というのはどうしても訓練期間で1ヶ月かかるということでございますが、2頭目3頭目も訓練センターで宿泊しながらばかりではなく、もし可能とすれば、自宅の方へ来ていただいての訓練も考えていかないと、この先伸びていかないのかなというところを大変心配しているところでございます。 本当に皆様のお世話になりました。ありがとうございました。 大竹委員 今回参加してみて、やはり聴導犬のユーザーがとても少ないと思いした。多分、見たことはありますが、実際使ってみようと興味を持つまではないような感じなのです。確かにICTが進んで、音声認識機器など補助的な機器が増えてきている中で、例えば災害のときに、ICTも含め電気が使えないような状況がたくさんあると思います。そのときに、聴導犬の役割というのはたくさんあると思います。何らかの方法でいろいろ発信していって、若年層も高齢者の人も含めて、いろいろな場面で助けになる仕組みというのがあるとよいと思いました。 竹田委員 いろいろ皆さん方からお話を聞いて、とても勉強になりました。ありがとうございます。私どもの団体の場合は、重度の四肢麻痺の会員も多く、自分ではなかなか介助犬の世話をすることもできないので、今回のこのリーフレットにあって、私達のように自分でできない人が、介助犬を使うことに対して、理解が広まっていけば、いいなと思ってますので、どうぞよろしくお願いいたします。本当に今回ありがとうございました。 山本委員 補助犬の中でも盲導犬というのは、社会的に見てもかなり恵まれている使用者の方ではないかと思っています。例えば育成団体が率先して周知などの啓発活動をしている。また、メディアを使ってそういった啓発に従事しているところもある。私達、私自身もそうですけども、受け入れ拒否に関してもまた、多分介助犬・聴導犬の方々よりは件数はかなり少ないのではないかと思って、恵まれていると私は思っています。 その中でもやはりまだまだ日本は受け入れに関しての周知などが低いかなと思っております。 個人的は話ですが、私は今日は旅行中で、今、沖縄から参加しているんですけども、本島の方ではかなり補助犬シールが普及しており、そして快く受け入れてくれるところもありますが、今回、事前に盲導犬同伴ですよということを一応配慮、お互いの配慮の面で事前にお知らせする中で、介助犬と盲導犬の区別もわからない施設もありました。 なので、そういったところからの受け入れ、私達の周知というのも必要になると思っております。先ほど橋井さんもおっしゃっていましたが、盲導犬使用者もかなり減っております。私どもの団体でも今年度だけでも40名ほど退会されました。高齢になって代替犬を持たないという方がほとんどでした。 なので、その中でも若年層に受け手の啓発に結びつけられるような、そしてまたまだまだ盲導犬の必要性をアピールしながら、この啓発リーフレットをこの補助犬全体通して使用者の拡充に生かしていけたら幸いに思っております。 82ページ目 木村委員 1年間皆さんどうもありがとうございました。私は96年に介助犬と生活し始めて、2002年に補助犬法ができるまで一生懸命法整備に尽力して、法律ができれば認知度もすぐ上がって補助犬の同伴拒否もすぐなくなると思っていたんですけれども、23年経っても認知度は低いままですし、同伴拒否もなくならなくて、僕たちの広報活動が間違っているんじゃないかというふうに常々ちょっと残念に思っているところはあります。今回も社会システムさんを初め厚生労働者の助成で、補助犬の普及啓発の効果的な広報活動について、皆さんの知恵をお借りして、このリーフレットができたので、こういうものを活用して少しでも補助犬使用者が増えるようになってくれればいいと思います。 それと災害時のリーフレットについても、今まであまり深く考えてなかったことでもあるので、今回の委員会を通じて自分自身の避難のことについても考えさせられる内容になったので、本当に感謝しています。今回はどうも皆さんどうもありがとうございました。 松本委員 皆さんありがとうございました。私も木村さんと同じように30年近く前から聴導犬と暮らしていて、自分自身が聴導犬と暮らして知ることができたいろいろなメリットであったり、安心安全、その生活をもっと多くの聴覚障害者の人に知ってほしい、味わってほしいという思いはずっと持っていました。 けれども、まだ社会の理解や受け入れが進んでいないことが大きかったので、いろいろな啓発活動も社会に対して「理解してね」とか、「受け入れてね」という活動が中心になってしまって、それが結果として、補助犬ユーザーを増やすことに繋がるとは信じていたんですけれども、やはり今までの活動はどうしても社会に向けてということが中心になっていました。 今回このプロジェクト、検討委員会で作られるリーフレットを通して、やっと障害当事者の方たちに直接、補助犬のことを知ってもらい、正しく理解してもらい、興味を持ってもらい、できることなら私達の仲間になっていただけるような機会になるのではないかなということをとても期待できる検討会でした。 また、災害に関しても、やはりもういつ起こるかわからない中、私達ユーザーは不安を持っています。その不安を少しでも解消する手立てになっていけばいいなと思っています。 ただ正直、この障害当事者への啓発と、災害時の補助犬については、それぞれ独立したプロジェクトにしてもいいくらい大きなテーマで、まとめて一つの検討会でやってしまうのはある意味勿体ない内容だったと思っています。 ただ、このリーフレットをきっかけで、障害当事者の中で、団体の中でもっと補助犬のことを知ろうと思う活動が始まるかもしれないし、自治体の中で災害時の補助犬についてもっと考えようという機会が起こるかも知れないので、このリーフレットがそういう次へのステップのきっかけになってくれたら嬉しいなと思っています。 また、いろいろなところで皆さんとお会いする機会はあると思いますが、一つ一つ私達が暮らしやすい社会に向けて皆さんで手を取りながら進んでいければなと思っています。今後ともよろしくお願いします。 事務局 追加のご意見は、3月11日(火)までにメールでいただきたい。 83ページ目 キ.その他の成果物 成果物として、 ●使用希望者に向けた周知リーフレット(盲導犬版、介助犬版、聴導犬版) ●災害時における身体障害者補助犬使用者への配慮事項についてのリーフレット ●令和4年度障害者総合福祉推進事業・身体障害者補助犬同伴の受入れのための啓発リーフレット(リバイス版) を作成した。 下記URLの弊社ホームページ特設サイトにリーフレットデータを掲載している。 http://www.crp.co.jp/business/universaldesign/R06_hojoken.shtml ■使用希望者に向けた周知リーフレット 01盲導犬使用希望者に向けた周知リーフレット 02介助犬使用希望者に向けた周知リーフレット 03聴導犬使用希望者に向けた周知リーフレット 上記3つの周知リーフレットについては、上記サイトでテキスト版も掲載している。 ■災害時における身体障害者補助犬使用者への配慮事項についてのリーフレット 下記リーフレットのテキストデータはサイトに掲載している。 ■令和4年度障害者総合福祉推進事業・身体障害者補助犬同伴の受入れのための啓発リーフレット(リバイス版) 01医療機関向け 02飲食店向け 03公共交通機関向け 04宿泊施設向け 05小売店向け 91ページ目 ク.成果の公表方法 本調査研究の報告書と各種リーフレットについては、納品後、調査実施主体である社会システム(株)のホームページに掲載し公表する。 なお、各種リーフレットの配布先は以下のとおりである。 ○使用希望者周知リーフレット 紙媒体:訓練事業者、障害者団体、点字図書館、ユーザー団体、能登町(ヒアリング自治体) 電子媒体:基礎自治体(厚生労働省のシステムから発出) ○災害リーフレット 紙媒体:訓練事業者、障害者団体、ユーザー団体、能登町(ヒアリング自治体)、ユーザー2名(ヒアリング者) 電子媒体:基礎自治体(厚生労働省のシステムから発出) ○施設受け入れリーフレット 紙媒体:ユーザー団体 なお、巻末に本年度事業で実施した補助犬使用者アンケートの調査票を添付した。 以上、終わり。